The Coalition 、グラフィックの描写力が 100 倍向上した新たな Unreal Engine 5 技術デモを公開!!


XboxとEpic Gamesが協力し、Unreal Engine 5 を活用した未来のゲーム開発環境を構築


過去にXbox Series X|S の次世代体験のひとつとして、 2021 年 12 月に『The Matrix Awakens: An Unreal Engine 5 Experience』を発表しましたが、 4 月 5 日に実施のイベント「State of Unreal」では Xbox と Epic Games との技術提携について、より詳しくご紹介しました。 Unreal Engine 5 のデモである「The Cavern Cinematic Tech Test」では、数千万ものポリゴンを使用した映画品質のアセットをリアルタイムでレンダリングし、従来の100倍の描写力を実現した方法を紹介しています。

今回公開された映像は Epic Games、 そして Unreal Engine と Xbox の長いコラボレーションの歴史における最新作と位置づけてもよいものに仕上がっています。実際、 2002 年の『Unreal Championship』や『Splinter Cell』のリリースまでさかのぼると、 Xbox と Unreal Engine の関係は今年で 20 周年を迎えたことになります。

今回、 The Coalition のスタジオ技術ディレクター Kate Rayner 氏に Epic Games とのコラボレーション、 Unreal Engine 5 上での開発、そして Xbox Series X|S での次世代ゲーム体験に期待できることについて話を伺いました。


The Cavern Cinematic Tech Demo


本日、 Epic Games の「State of Unreal」プレゼンテーションで新たな Unreal Engine 5 (以下「UE5」) のデモが公開されました。このデモについてより詳しく教えてください。

The Coalition では UE5で初めてシーケンサーを使用しましたが、チーム、さらにはスタジオ全体が一丸となったことで、非常に楽しく技術デモを制作することができました。フェイシャルアニメーションとキャラクターモデルの全体的なクオリティには自信があります。

表情のモーションについては、次世代フェイスリグのテストバージョンを利用し、ヘッドカムを装着した演者のパフォーマンスをキャプチャしました。演者が行った繊細な表現を Cubic Motion の技術により、技術デモにおいても遜色なく再現することができました。コントロールリグと組み合わせることで、これまでで最もリアルな見た目と動きを持つ人物を作り上げることができたと思います。今後さらにリアルな表現が可能になっていくのが楽しみです。また、物理表現の Chaos Cloth Physics も活用して、非常に高いレベルの視覚的な忠実度を実現しました。

このような素晴らしいビジュアルとアニメーションを Xbox Series X で動作させられるということは、 UE5 のパフォーマンスについて多くのことを物語ってくれます。今後、この新しい技術によって、非常に素晴らしい作品を開発できると言い換えてもいいでしょう。


The Coalition 、 Xbox 、そして『Gears』の歴史


Unreal Engine 5 は『Gears』フランチャイズにどのような影響を与えますか?

かなり初期の段階から UE5 は触らせていただいていたので、新作の開発を進めるうえで多くのメリットを見出すことができました。洗練された視覚的な忠実度、より広大でインタラクティブな環境情報を含め、 UE 5 はまだまだ多くの力を秘めています。

The Coalition と Unreal Engine の関係は?

The Coalition が設立された2010年以前から、 Epic Games とは UE についてさまざまな対話を行ってきました。 AAAデベロッパーならではの視点からのフィードバック、バグ修正や最適化、 Xbox プラットフォームへのサポートを可能な限り最適化するなど、あらゆる面でエンジンの発展に協力しています。


UE5での作業


Unreal Engine 5 の完全なツールキットがまもなく利用可能になりますが、その中で次回作に活用するツールはどのようなものを考えていますか?

次回作について、現段階で話せることはありません。しかし、 Lumen や Nanite などの新しい技術には期待しています。

オブジェクトのポリゴン数を自動調整してくれる技術 Nanite がどれほどのものかは、当社のシネマティック技術デモでもご覧いただいたものと思いますが、このツールのおかげでフル品質のムービーアセットをリアルタイムでレンダリングできるようになりました。つまり、数千万ポリゴンのアセットから数十億ポリゴンのシーンまでスケーラブルに作成できるようになったのです。そのディテール量は、これまでの100倍以上と驚異的です。キャラクターの眼球のディテールだけでも、頂点とポリゴン数は前世代のゲームのキャラクター一人分に相当しうるのです。

また、 Lumen によって新しい光の表現ができるようになりました。このツールのもたらす動的なグローバルイルミネーションと反射の表現は、開発者たちから長らく求められてきた機能ですが、これまでコンソールゲームでは実現できていませんでした。 これを実現する Lumen はコンソールゲームの描写水準に革命を起こす技術です。

The Coalition で培われた Unreal Engine に関する専門知識は、 Microsoft 全体において UE を使っている他のチームに対してどのような恩恵を与えているのでしょうか?

私たちの知識は Xbox Game Studios の他のチームと逐一共有されています。また、Xbox ATG (Advanced Technology Group) とも密接に連携しているため、システムレベルでの最適化も推進しています。

UE5 を使い始めてどのくらいになりますか?

UE5 の習熟にはアーリーアクセスの前から約 1 年以上取り組んでおり、最新のコードやコンテンツを用いた実験に加えて、多くの社内テストを実施しています。これにより、 Xbox と Unreal Engine に対して知見を深めつつ、 AAA スタジオとして Epic Games に対して早期からさまざまなフィードバックを行ってきました。

UE5 の第一印象はいかがでしたか? また、驚いたことはありましたか?

UE5 に触れられるようになってからは、 The Coalition のメンバーが次から次へとテストに参加するようなお祭り騒ぎが起きました。その勢いのまま制作されたのが『Alpha Point Technical Demo』でした。特に参加者が驚愕していたのが、その時点でのエンジンの全体的な完成度、そしていかに UE4 のコンテンツをシームレスに UE5 へと取り込めてしまうのか、といった点でしょうか。

Unreal Engine 4  から Unreal Engine 5 への移行はどのようなものでしたか?

全体的な推移は非常にスムーズで、チームの UE4 から UE5 への移行は 2週間ほどで完了しました。既に当社の全スタジオが UE5 に移行していることから、この作業がどれほど容易であったかをご想像いただけるかと思います。昨年の GDC で公開した 『Alpha Point Technical Demo』はもともと UE4 で作られていたものですが、このプロジェクトも早い段階で UE5 に移行され、そのまま制作が続行されました。何度もいうようですが、移行作業は極めてシームレスであったと認識しています。UE4 で次世代コンテンツを使ってデモを作成し、アセットをどんどん追加していくうちに動作が重くなり始めていたのですが、UE5 に移行した途端、恐ろしく機敏に作業が行えるようになったことを記憶しています。これを体験してしまっては、もう UE4 に戻ることはできませんね。

UE5 への移行をよりスムーズに、あるいは、よりシンプルにするような機能はありましたか?

UE5 のアーキテクチャはモジュール化されており、エンジンを個別のニーズに合わせて機能拡張し、変更するための仕組みとしてプラグインが活用されています。今回のプラグインにはコードだけでなく、コンテンツも格納できるのが大きな特徴です。 UE4 を使用していたときは、時間の経過とともにエンジンそのものに多くの変更を加えていたため、統合コストが割合高くなっていましたが、 UE5 に移行した今、統合はよりスムーズになり、エンジンの機能性の変更が簡易であることから柔軟な開発が進められるようになりました。

Unreal Engine において、便利なのに見過ごされている機能があれば教えてください。また、他の開発者に呼びかけたい点はありますか?

Unreal Insights は開発者が開発プロセス中にあらゆるものについてリアルタイムでデータを収集することができるので、これはぜひ活用していただきたい機能のひとつです。また、1080p でレンダリングするコストで 4K をレンダリングできる Temporal Super Resolution  (TSR) は素晴らしい機能です。どちらの機能も開発を大いに手助けしてくれるでしょう。

UE4 から UE5 への移行に伴い、アイディア出し、実験、制作へのアプローチ方法はどのように変化しましたか?

UE5 ではエンジンの中で見たままを実現できるため、イテレーションにかかる時間が大幅に短縮されました。もう当てずっぽうの作業は必要ありません。UE5 には開発を最大限に支援するためのテクノロジーがすべて備わっているので、あとはコンテンツクリエイターに慣れ親しんでもらうだけです。

Alpha Point Technical Demo とは? 開発から得た教訓は何ですか?

Alpha Point Technical Demo は、 UE5 を用いたアーリーアクセスデモで、環境技術テストと略式キャラクターシネマティック、初期のラージワールド技術テストが含まれています。このデモを通して The Coalition のチームは新しいワークフローと UE5 に搭載された技術に習熟し、さらなる改善のためのフィードバックを Epic Games に提案することができました。


『The Matrix Awakens』の体験


皆さんは Epic Games と共同で『The Matrix Awakens: An Unreal Engine 5 Experience』のXbox Series X|S 版の開発を行いましたが、この作品の業界へのインパクトや意義を教えてください。

前世代ゲーム機では不可能な、まさに次世代ゲームの体験を実現した例のひとつです。次世代ゲームのハードルの高さと、開発を成しえるために必要なワークフローなど、素晴らしい学習体験となりました。

The Coalition や Xbox がどのように関わったか、詳しく教えてください。

Epic Games 、 The Coalition 、 Xbox 開発チームとの共同作業で、 Epic Games が UE5 で実現しようとするビジョンをまず Xbox Series X の作品として仕上げ、そして次にこちらを Xbox Series S 向けに最適化しました。

『The Matrix Awakens』は成功したと言えますか? またこの仕事において最も誇りに思うことは何ですか?

もちろん成功したと思っています。レイトレーシングを含むすべての機能を搭載したこの次世代の体験を Xbox Series X で、さらには Xbox Series S においてもほぼ同レベルのクオリティで実現できたことは、本当に素晴らしい結果であるといえます。このコラボレーションを通じて Xbox の開発ソフトウェアのランタイムの最適化、バグの修正、ツールの改善なども行われ、すべての開発者にとって有益なプロジェクトになりました。

Unreal Engine 5 の導入によって、現実と全く区別のつかないゲーム世界が実現する日にまた一歩近づいたと感じますか?

これまでのテクノロジーの進歩が私たちに教えてくれたことは、その歩みが止まることは決してないということです。リアルタイムで本物さながらのレンダリングができるようになるまで、あと少しです。しかし、テクノロジーそのものは決して立ち止まって「終わった」と主張することはないため、開発者たちは今後も与えられた技術を活用し、作品磨きを続けていくでしょう。


今後の展望


UE5のリリースで最も期待していることは何でしょうか。

UE5の登場で開発者は過去の足かせから開放され、これまでずっと夢見てきたコンテンツを実際に作ることができるようになります。妥協する必要がなくなったのです。 Nanite を使用すればモデルのローポリゴン版を手動で作成する必要がなくなり、 Lumen を使用すれば、「照明をリビルドする必要があります」と表示されてオフラインの静的照明がリベイクされるのを待つ必要がなくなります。こうした新技術は、開発プロセスを大幅にスピードアップさせます。

最後に、今後の展望についてお願いします。

Xbox と The Coalition は今後も Epic Games と協力して、ゲームの可能性と限界を押し広げていきたいと思います。

※この記事は米国時間 4 月 5 日 に公開された “The Coalition Debuts New Unreal Engine 5 Tech Test with 100x More Graphic Detail ”を基にしています。