ひと目見れば、『Harold Halibut』が特別に手の込んだ労作であることは明らかでしょう。本作は、水中にある宇宙船が舞台のナラティブなアドベンチャーゲームです。プレイヤーはそこで研究助手として働く主人公のハロルドとなり、トラブル解決のためにあれこれ奔走することになります。
本作の世界では、基本的に細いパイプを通して人間を目的地まで運ぶウォーターチューブシステムによって巧妙に地区が分けられており、ハロルドは (かなり巨大な) 宇宙船の中を駆けずり回ることになります。その途中で出会うのが、迷子になったペットの鳥を探したり、店の主人が妻の愛を取り戻すのを手伝ったりと、それぞれの務めに励みながらも、ハロルドをおかしな出来事に巻き込んでいく、変わり者の登場人物たちです。『Harold Halibut』を取り巻くキャラクターたちは、ブリティッシュ ユーモアたっぷりで巧みに描かれています。
『Harold Halibut』は舞台設定も同様に魅力的です。多くは語られませんが、ハロルドは居住する新しい星を見つけるために旅立った探検隊の小さなコロニーの子孫です。宇宙船は水中に墜落しましたが、何世代もの人間が何とかそこで生き延び、栄えてきました。物語が進むにつれ、ハロルドは人類の歴史、地球の運命、そして彼を取り巻く人々についての物語を理解し始めるとともに、彼にはもっと大きなことができるということを証明していきます。
楽しい物語を彩るのが、『Harold Halibut』の最も分かりやすい特異性――本作の美術が物理的に粘土から作られており、ゲーム内に登場するすべてのアセットが手作りされた後、デジタルスキャンでゲームに組み込まれているという点です、まったく信じられない工程ですが、この手法によって『Harold Halibut』は、『クレイマン・クレイマン』のような ’90 年代のポイント & クリック型アドベンチャーゲームを彷彿とさせる心地よいレトロ感を醸し出しつつ、洗練されたモダンな雰囲気も兼ね備えているのです。
『Harold Halibut』の驚くべきレトロフューチャーへのこだわりは、驚異の音響デザインによってもさらに高められています。あらゆるインタラクション、会話、環境音が作り込まれており、実際にハロルドと一緒にその場にいるような気分にさせてくれます。これらのサウンドと手作りのビジュアルの組み合わせが、『Harold Halibut』に極めてユニークな直感的な喜びをもたらし、何もない廊下や静かな部屋でさえ没入感や面白さを感じさせてくれるのです。
本作では、ゲーム内のほとんどの場所を訪れ、登場人物たちに何度も話しかけて彼らの物語を解き明かしていくことになりますが、この贅沢な空間を探索するのを立ち止まっても、決して退屈には感じません。本作には、ちょっとした小粋な謎解きやミニゲームも多くあり、ゲーム内での毎日の移動や会話の合間に、程よいインタラクティブ性をもたらしてくれます。『Harold Halibut』では、風変わりな舞台装飾や、さりげなくくだらないジョークなど、ちょっとしたことに注目してみてください。そうするに値するこだわりが、そこかしこに溢れています。
筆者がハロルドと一緒に過ごしたのはほんの数時間ですが、物語がどこへ向かうのか、ハロルドが再び地球を見つけようとする過程で、どんな奇妙で素敵な生き物たちと出会うことになるのか、すでに夢中になっています。『Harold Halibut』は非常に特別なゲームになりつつあり、もっとプレイするのが待ちきれません。
『Harold Halibut』は現在、Xbox Series X|S および Game Pass にてお楽しみいただけます。
※この記事は米国時間 2024 年 3 月 21 日に公開された “Harold Halibut Hands On: A Heartfelt, Handmade Tale About Fish, Friendship and Finding Home” を基にしていま