筆者と同様、骨太なサイバーパンクが好みの皆さんは『REPLACED』を大いに気に入るでしょう。平行世界における 1980 年代アメリカン ディストピアが舞台のアクション プラットフォーマーである本作では、終末的な出来事を経た世界にはびこるアウトローたち、そして彼らの欲望と腐敗が支配する「フェニックス シティ」をプレイヤーは旅します。
今回、試遊する機会を得られた『REPLACED』は、筆者のサイバーパンク嗜好を実に満足させるものでした。
試遊では 3 つのセクションが用意されており、『REPLACED』がもつ特徴や強みを余すことなく体験することができました。プロローグでは本作の主人公であり、爆発事故の際に人間の肉体に囚われてしまった人工知能「R.E.A.C.H.」が登場します。そして、プレイヤーは R.E.A.C.H. のこれまでの経緯を回想する時間すら与えられず、死ぬか逃げるかの究極の二択を迫られます。

突如始まるギリギリの追跡劇から逃れるため、R.E.A.C.H. は障害物を飛び越え、ナノ秒単位の制動を強いられます。全力で思考し、逃げるルートを探す間も、捕獲の危機、そして降り注ぐ銃弾の雨によるゲームオーバーとは常に隣り合わせです。こうして始まった『REPLACED』のゲームプレイは、この先の体験にも慈悲など決してないであろう、と強く予期させました。
なにより、このセクションを昇華させていたのはゲームプレイとシネマティックな体験を融合させている、滑らかな場面の切り変わりでしょう。ゲームプレイから、80 年代の爆破物を多用したアクション映画さながらのカットシーンが違和感なく流れはじめるのです。そうこうしているうちに、光の粒子が木々の間から流れ落ち、荘厳な鉄柵の隙間から差し込んでくるシーンが流れ、逃走劇は終盤を迎えます。が、あまりに美しい景色だったために、よそ見で何度かゲームオーバーになってしまいました。
追跡劇のクライマックスでは、R.E.A.C.H. が行き止まりから決死のジャンプを試みます。ここでも、まるで映画かのような、「ブレードランナー」風の寒々しい色使いが特徴の壮大なカットシーンが入ります。本作は古典的なアクション映画のような体験でありつつも、ピクセル アートとしての魅力を発揮する丁寧なひねりが加えられています。
『REPLACED』の試遊において最も重要な局面で、R.E.A.C.H. はフェニックス シティーでの新居であり、今後のストーリーのハブとしても機能する廃駅「JS1」にたどり着きます。そこで R.E.A.C.H. を迎え入れたのは、多種多様、かつそれぞれに問題を抱えるキャラクターたちでした。ここから『REPLACED』のストーリーが輝きを見せ始めます。R.E.A.C.H. が出会う一人ひとりには人間的、道徳的な複雑さが伴い、それぞれが生き延びるため、後ろめたくともやらなければならないことをしています。しかし、これは A.I. である R.E.A.C.H. にとっては必ずしも理解できるものではありません。キャラクターたちを取り巻く環境、そして必ずしも一致しない行動を R.E.A.C.H. は観察することで、物語が進むにつれて興味深いやりとりへとつながっていきます。

キャラクター同士の交流が増えるのと同時に目に入ってくるのは、素晴らしいデザインの数々です。廃駅をゆっくりと歩いていると、虹色の照明に照らされた、荒廃して崩れかけた建物の数々、ネオンに染まる 80 年代風のアーケード街、そしてさまざまな品物を取り扱う、多数の屋台が軒を連ねる市場を通り過ぎます。ひとつの通りでは、錆びた金属製の棚に、溢れかえるように置かれた鉢植えが目に入り、その上にはデザインがばらばらのソファに腰掛け、テレビを鑑賞する人たちがいます。欠損した手足を杖で補いながら歩く人や、友人に肩を借りて歩いている人たちが R.E.A.C.H. の横を通り過ぎます。こうした表現が、『REPLACED』の世界観を際立たせ、フェニックス シティがただの過激なディストピアや、ヒーローを求めているだけの場所ではなく、過酷な状況にあっても必死に生きようとする社会の悲惨さとそのたくましさが描かれていることが伝わってきます。
最後のセクションでは、本作のクラシックかつクールな戦闘を知ることが出来ます。巧妙なタイミングで敵を武装解除し、奪い取ったこん棒を握りしめて R.E.A.C.H. は周囲の敵に攻撃を開始します。銃による攻撃を行うには、まずは近接攻撃を使うことでゲージを溜めなければいけませんが、一度の銃撃によってゲージは一気に底をついてしまいます。ヒーローとしての素質はありつつも、今の段階では R.E.A.C.H. はまだまだ実力をつけなければなりません。

試遊が終わるころには、筆者は製品版の『REPLACED』の世界に飛び込み、フェニックス シティに埋もれた物語をさらに解き明かす準備が出来ていました。もし『REPLACED』が皆さんの好むようなレトロフューチャーであるなら、X (元Twitter) で情報発信を続けている @ReplacedGame でゲームの最新情報を確認してみましょう。
※この記事は米国日時 6 月 7 日に公開された “Hands On: Replaced Is a Stylish Retro-Futuristic Platformer with an ’80s Cinematic Edge” を基にしています。