狂気の世界の再構築: 『Gears of War: E-Day』がシリーズの未来を示す理由

概要

  • 「Xbox Games Showcase」で公開された『Gears of War: E-Day』の強烈な最新トレーラーをご覧ください。
  • 『Gears of War: E-Day』では、マーカス フェニックスの目を通した、エマージェンス デーにおけるローカストの侵攻の恐怖を描くオリジン ストーリーが展開します。
  • この待望のオリジン ストーリーが、どのように「Unreal Engine 5」で一から作り上げられたのか、The Coalition の開発者たちに詳しく話を伺いました。

本日開催された「Xbox Games Showcase」でGears of War: E-Dayがサプライズ発表され、エマージェンス デーへと遡る衝撃的なトレーラーが公開されました。同トレーラーでは、『Gears of War』シリーズにおける決定的な瞬間、すなわち恐ろしいローカストが惑星セラに対して地下から残忍な奇襲攻撃を仕掛け、その存在を知らしめる場面が描かれます。ここで、シリーズの主人公であるマーカス フェニックスとドミニク サンチャゴが若き日の姿で登場し、ローカストによる侵攻との戦いが始まるのです。この出来事こそ、私たちが愛して止まない『Gears of War』の魅力のすべてを生み出すきっかけとなるものですが、なぜ今回、この物語が語られることになったのか、The Coalition の開発者たちに話を伺いました。

クリエイティブ ディレクターのマット サーシー (Matt Searcy) とブランド ディレクターのニコール フォーセット (Nicole Fawcette) によると、The Coalition 内は興奮のるつぼと化しており、ついに『E-Day』を世界と共有できることに歓喜しているとのことです。この数年間、同スタジオは粛々と、しかし絶えず忙しく動いていて、『Gears 5』を完成させ、同 DLC の「ハイヴバスター エキスパンション」や『Gears Tactics』を世に送り出し、その間ずっと、コロナ禍やスタジオの運営方針の変化に適応してきました。その間、活動のリズムが変化したことで、開発チームは次の魅力的な「Gears」の物語を見つけるために、自分たちやファンが本当に好んできた要素が何かをあらためて考え、理解する時間を持つことができたと言います。

「このシリーズを表現するために私たちが使う言葉の多くが、ファンも使っている共通の言葉だと気づきました。ブラザーフッド (兄弟愛) 、残忍さ、哀愁、畏怖といったフレーズです」とサーシーは話します。「なぜ E-Day (エマージェンス デー) なのか? すべてがひとつになる瞬間だからです。『Gears』の世界の中心であり、すべての出来事がこの日から形を持ち始めるのです」

「Gears of War」シリーズ本編のファンであれば、『Gears of War: E-Day』の操作感に違和感を覚えることはないでしょう。The Coalition は、シリーズの特徴である三人称視点アクション、すなわち生死を分ける状況下でのカバーの合間を縫っての突撃や、満足度の高いゲームプレイと感情を揺さぶるキャラクター主導のストーリー展開が融合した魅力的なキャンペーンの再現や改良に取り組んでいます。しかし、これらすべてが最新のレンズを通して語られ、さらに画期的なテクノロジーに根ざしているため、The Coalition はこれらの要素を真に練り上げる余地を有していました。1 作目に匹敵するクラシックな「Gears of War」タイトルでありながら、次世代のテクノロジーに支えられている、という絶妙なバランスを『E-Day』は保っています。

「新しい『Gears』タイトルのように感じてもらえると思います」とサーシーは話します。「『Gears』 の魅力的なテイストや感覚を再考すると同時に、新しい手法、新しいプロセス、新しいテクノロジーを取り入れることで、ゲームプレイ感がこれまで以上に改良されています。本当に新しく、かつ本物の『Gears』だと感じられる、素晴らしいゲームになると思います」

モンスターの復活

『Gears of War: E-Day』では、初代『Gears of War』の 14 年前を舞台に、ローカストが初めてセラに出現するストーリーが描かれます。ゲームが展開するにつれ、プレイヤーの皆さんは準備不足の世界がローカストのような脅威にどのように反応するかを知ることになります。The Coalition は、ローカストを単なる敵ではなく、生きた悪夢として描き直すことに非常にこだわっています。ローカストは、よくいるエイリアンやゾンビのようなビデオ ゲームの敵役ではなく、地下に棲み、私たちの心の奥底にある恐怖につけ込む、謎めいた恐ろしい存在です。「デザインの概要は非常にシンプルでした」とサーシーは語ります。「ローカストは“ベッドの下の怪物”なのです。この圧倒的なモンスターの軍団が現れたとき、セラの人々はどうなるのか? そして、どうするのか?」

スタジオ アートディレクターのアーヤン ハンベック (Aryan Hanbeck) は、「プレイヤーが『E-Day』を体験するとき、初めて怪物に遭遇するセラの人々の目を通してすべてを見ることになります」と、さらに説明します。デザイン チームは、シリーズが進むにつれて徐々に単なる砲弾の餌食になっていったローカスト ドローンを再定義することを優先しました。「ドローンを恐ろしく、物理的に威圧感があり、極めて残忍な存在へと変貌させました」とハンベックは言い、発表されたトレーラーでの、マーカスとドムに拮抗しうるほどの強化ぶりを強調します。「ドローンの立ち位置を見定めることは非常に重要でした。そこから他のすべてのローカストがスケールアップしていくのです」

原初の物語

『E -Day』の発表トレーラーでは、前述のローカスト ドローンと激しい戦いを繰り広げるマーカスを垣間見ることができます。しかし、これまでのマーカスとは違い、若く経験のないその姿は、私たちが知っている敵の軍勢を蹴散らす歴戦の兵士ではありませんでした。不気味な怪物と対峙するのは今回が初めてのマーカスから滲み出る緊張や無力感は、レトロランサーでなく、近くにあったテレビで応戦しようとしたところからも感じられるでしょう。The Coalition が『Gears of War: E-Day』で表現しようとしているのは、この生々しい、自分事にも思える残忍さと絶望感です。マーカスも、彼を取り巻く世界も、このレベルの脅威にはまだ対応できていないのです。

目ざといファンであれば、トレーラーでマーカスが一瞬だけ振り回した Mk.1 ランサーに脱着可能な銃剣が付いていることにも気づいたかもしれません。これは、シリーズ全体で知られているチェーン ソー付きの銃ではありません。

フォーセットは、『E-Day』が (チェーンソー付きの) ランサー アサルト ライフルを含む「多くのオリジン (=始まりの) ストーリー」であることを認めつつも、今のところ、それらの物語の具体的な内容についてはついに明かしてはくれませんでした。言うまでもなく、『E-Day』で語られるのは、マーカスとドムがどのようにして私たちの知るヒーローになったのかだけではありません。

「ランサー アサルト ライフルは、現時点ではこの世界には存在しません……でも、ローカストをチェーン ソーで切り刻まなければ、『Gears』ではありませんよね」とフォーセットは笑います。

ファンであれば、トレーラーで Tears for Fears の「Mad World」が使われていることにもすぐに気付くでしょう。ゲイリー ジュールズ (Gary Jules) 氏がカバーしたことで知られる、初代『Gears of War』の CM で使用された楽曲です。作曲家のアダム ラスティウカ (Adam Lastiwka) 氏は、『Gears of War: E-Day』のトレーラー用のために、この象徴的な「Mad World」の楽曲を見事に再構築し、ゲイリー ジュールズの不穏なカバーを引き立て、ゲームのダークでシビアなテーマに完璧にマッチする、初代の気風あふれるインストゥルメンタル カバーを作り上げました。 

このインストゥルメンタル カバーは、マーカスとドムがローカストによって壊滅させられた街の廃墟を見つめる場面で流れます。この楽曲は、2006 年にテレビで放送されていた画期的な CM に関する深い情緒を呼び覚ましてくれます。当時のよくあるビデオ ゲームのプロモーションと異なり、その CM では主人公を脆い、孤独な人物として描くことで、当時の大仰なマーケティング手法とは対照的な形で際立たせていました。

「楽曲の再ライセンスは始まりにすぎません」と、フォーセットは話します。「初代の『Mad World』の CM が共感を呼んだのは、無敵さではなく、弱さに根ざしたヒロイズムを描いたからです。私たちは、あの CM を印象的でインパクトのあるものにした、すべての要素を探りたいと思いました」。この省察が切り口となり、トレーラーが単に懐かしさを呼び起こす以上のものへと進化しました。「私たちの目標は、シリーズの根本を成すアイデアを探り出し、再活性化させることでした」

ローカストとの熾烈な近接戦で崖っぷちに立たされたマーカスは、素早い動きでドローンをかわし、壁に突き刺さったランサーから銃剣を切り離して、キル ショットで敵を倒します。回復に少し時間がかかってしまった彼は、出現した巨大なローカスト ホールによって床板を突き抜け、死を免れないであろう落下を開始します。ローカスト ホールを目にするのは『Gears of War: Judgement』以来ですが、この巨大な空洞がたやすくビル全体を飲み込むのを見るのは、恐怖感を植え付けられる体験でしょう。もうダメかと思ったその瞬間、彼を助けようと手を差し伸べる、若きドミニク サンチャゴの姿が映ります。この一連の映像こそ、長年のファンにとっては、他に類を見ない感動的な帰郷を成立させているでしょう。

ブラザーフッドの始まり

本作のストーリーは当然、皆さんの知るより遥かに若いマーカスとドムの視点から描かれます。ふたりはペンデュラム戦争 (シリーズ開始前に起きた人間同士の争い) を生き抜いた兵士ですが、今回は彼らが直面するのはまったく新たな脅威です。「最高の『Gears』タイトルには、重荷の共有、帰属意識、信頼、忠誠心といった感情面に訴えかけてくるテーマが含まれますが、マーカスとドムは『E-Day』に向けて、じつに興味深い関係を築いています」とサーシーは話します。

『E-Day』のストーリーの背景を説明すると、マーカスとドムは、戦場で死んだドムの兄、カルロスを通じて知り合っています。マーカスはカルロスと戦友だったため、共通の喪失を抱えることで親近感を覚えており、二人はその感情を共に乗り越えようとしている、まさに初期段階にあります。

「マーカスとドム、そして彼らの絆のオリジン ストーリーが描かれるのですが……これこそがシリーズを象徴する絆と言えるでしょう」とサーシーは続けます。「彼らは、『Gears of War』から『Gears of War 3』を通して私たちが見てきた存在では、まだありません。10 年間、ローカストと戦ってきたわけでもありません。本作の開始時、セラは平和であり、ふたりは愛する共通の人物がいない人生の生き方を模索している途中なのです」

「プレイヤーは、『Gears』の象徴であるブラザーフッドが形成されていく様を目にすることになります」

『E-Day』では、ローカストという新たな脅威への対処がふたりの主人公にとってより差し迫った問題となりますが、ゲームプレイ中、ブラザーフッドが一貫してストーリー全体を結んでいることに変わりはありません。フォーセットは、プレイヤーにこうした点に特に注目してほしいと話します。

「このふたりの主人公は喪失により脆くなっていて、それがじつに現代的な解釈だと思うのです」と、フォーセットは言います。「ふたりの間には共通の重荷があり、それが彼らの関係が構築されて行く中で非常に面白い緊張感を生み出していきます」

「この終末の日に起こっていることを背景に、親密な物語が展開していきます。ファンにとって、彼らの絆を深く掘り下げ、それが時間とともにどのように変化していくのかを知ることは、本当に魅力的な体験になると思います」

一からの構築

The Coalition のビジョンの鍵となるのは、オリジナルの体験を尊重しつつ、『E-Day』をゲームプレイとストーリー展開だけでなく、テクノロジー面でも驚きを与える作品にすることです。初代『Gears of War』以降、ゲームを開発するプロセスは長い道のりを進んできました。「Unreal Engine 5」を導入した The Coalition は、このエンジンの進化を最大限に活用し、技術力の新たな基準を確立する用意ができていました。

初代『Gears of War』の発売時、「Mad World」を冠したトレーラーはまさに衝撃的なものでした。完全にエンジン内でレンダリングされたそのトレーラーの映像は、シネマティックな映像と実際のゲームグラフィックとの間に大きな隔たりがあった当時としては珍しく、プレイヤーがゲームプレイの体験における基準を打ち立てました。Epic Games が自社製の「Unreal Engine」を使用したことは、ゲームのビジュアルとパフォーマンスに対する自信を示すだけでなく、エンジンのパワーを大胆に宣言するものでもあったのです。

The Coalition は、「Unreal Engine 5」を採用した『Gears of War: E-Day』の発表トレーラーで、その偉業を称えています。

「『Unreal Engine 5』への進化により、技術力は飛躍的に向上しました」と、The Coalition のスタジオ テクニカルディレクターであるケイト ライナー (Kate Rayner) は語ります。「『Gears of War: E-Day』を比類なきビジュアル体験にするために、今回は『Gears 5』の 100 倍以上の環境とキャラクターのディテール、ハードウェア レイトレーシングによるライティング、反射や影、次世代の破壊やゴア表現、最先端のアニメーション技術など、数え切れないほどの改良が施されています」

「私たちの野望は、再び、卓越したテクノロジーで新たな基準点を打ち立てることです」と、ライナーは続けます。「『Gears』を一から完全に現代仕様にして、『Gears』の DNA に最新のゲームとしてのテクノロジーをフルに注入しました。『Gears of War: E-Day』のキャラクター、環境、アニメーションのすべてが「Unreal Engine 5」で完全に再構築され、これまでにないディテールやリアルさで『Gears』の世界を表現することが可能になっています」

「初代の『Mad World』トレーラーでは、エンジン内の映像を使用することで、真のメッセージを伝えました。『Unreal Engine 5』となった今も、その試みをさらに推し進めています」と、ライナーは言います。「今回、発表したトレーラーの目標は、ゲームにおけるストーリー展開とテクノロジーの両方の限界を押し広げるという、私たちの取り組みを強調することでした」

フォーセットはこう付け加えます。「1 作目のマーカスとドムを見ると、彼らは大柄で頑丈な、まるで戦車のようなシルエットで、デザインも誇張されています。トレイラーで見てただいたように、(『E-Day』では) 彼らが今回、いかに人間的なキャラクターとして命を吹き込まれたかが分かると思います」

「Gears」の未来 

もちろん、これで「Gears」シリーズの他の進行中のストーリーが終わるわけではありません。開発チームは『Gears of War 4』と『Gears 5』で語られたストーリーに納得しており、決して見捨てているわけではありませんが、今回のような代表的なオリジン ストーリーに対する共通の情熱は、無視するにはあまりにも大きすぎました。エマージェンス デーとマーカス、ドムのオリジン ストーリーは非常に魅力的で、なおかつ「Gears」の世界においても極めて重要なイベントであるため、The Coalition はその全容を語ることを決めました。

「『Gears of War 4』と『Gears 5』、そしてそこで語られたストーリーを私たちはとても誇りに思っています」とフォーセットは付け加えます。「それらのストーリーから手を引くつもりはまったくありません。しかし、今このタイミングで、次のステップを綴る機会を得たことから、この期を逃すのは惜しいと思ったのです」

『E-Day』がスピンオフ作品ではなく、メイン シリーズの完全な新作であり、タイムラインの初期に設定されていることも重要です。本作での出来事は、ふたりの愛すべきキャラクターたちのエキサイティングなオリジン ストーリーとしての面だけでなく、その時代におけるディテールや背景を強化し、後に続くストーリーにも反映されていきます。エマージェンス デーのローカストは、主人公たちが戦い慣れている敵ではありません。マーカス、ドム、そしてセラの仲間たちは、手遅れになる前に対処法を学ばなければなりません。『E-Day』で起こり、学ぶすべてのことが、『Gears of War』の未来をより良いものにしていくのです。

これは、皆さんがずっと知りたかった『Gears of War』の物語です。『Gears of War: E-Day』に関する最新情報は、X で @GearsofWar をフォローしてご確認ください。

※この記事は米国時間 2024 年 6 月 9 日に公開された “Reinventing A Mad World: Why Gears of War: E-Day Represents the Future of the Series” を基にしています。