Remedy のゲーム ディレクターを務めるマイク カヤッタ (Mike Kayatta) は自身の手掛ける新作について、次のように述べています。
「『FBC: Firebreak』は『Control』の DLC でもなければ、『Control』の続編でもありませんよ」
「いずれの可能性に対しても、できる限りの距離を置いています。ある種、最も前向きな形でのスピンオフと言われればそうかもしれません。ただ、本作は決して一口サイズの体験に収まった『Control』ではありません。『FBC: Firebreak』はその独自の世界観の中で完成している作品なのです」
『FBC: Firebreak』が何を表現しているのかを人々に伝えたいというカヤッタ氏の思いには、十分な理由があります。本日の「Xbox Partner Preview」でそのゲームプレイの世界初公開が行われた本作は、単に「Control」シリーズや Remedy の「Connected Universe」に全く新しいだけでなく、スタジオそのものにとっても全く新しい試みです。
伝説的なスタジオである Remedy Entertainment が最初のゲーム タイトルをリリースしてから約 30 年が経過した今、初めて手掛けるマルチプレイヤー プロジェクトである『FBC: Firebreak』は、『Alan Wake 2』で少し触れられたことを除けば、『Control』の世界へとプレイヤーが舞い戻る最初の作品となります。当スタジオがこれまで手掛けてきたシングルプレイヤーやナラティブなタイトルの歴史からすれば、これまでのタイトルとの違いを語ることは容易でしょう。しかし、そうした話よりも『FBC: Firebreak』がどのような形を取っているのか、を語るほうが興味深いかもしれません。
「Xbox Partner Preview」で発表された、世界初公開のゲームプレイ トレーラーからは、その一端が見えてきます。
「『FBC: Firebreak』は 3 人協力型の FPS (一人称シューティング) です」とコミュニケーション ディレクターを務めるトーマス プハ (Thomas Puha) 氏は述べています。「友人たちを誘い、一緒に楽しめるような手軽に遊べるゲーム タイトルで、複数のエキサイティングな協力型ミッションを通じて Remedy ならではの創造性を楽しめる内容になっています」
「これまで Remedy ではシングルプレイヤー ゲームをたくさん作ってきましたし、今も開発中のゲームがあり、これもきっと素晴らしいものになるでしょう。しかし、私たちは長らく PvE 型のマルチプレイヤー タイトルを作りたいとも考えてました。何を隠そう、Remedy の中にはシングルプレイヤーだけでなく、マルチプレイヤー タイトルで得られる体験が大好きなメンバーがたくさんいます。常に同じ種類のゲームを作り続けるのではなく、新しいフロンティアへと打って出ることが大切なのです。」
プレイヤーの皆さんは、連邦操作局 (Federal Bureau of Control) の暗い心臓部で恐ろしく変貌し、変化を続ける局の本部「オールデスト・ハウス」の中で待ち受ける超常現象の脅威に対抗するために派遣された勇敢な救急隊員の一員としてプレイします。初公開となった映像を観てみると、他の PvE 型マルチプレイヤー タイトルとも共通する要素が見受けられる中でも、敵や周囲の環境、そして特に装備に Remedy ならではのテイストが感じられます。
Remedy はまだ映像に映った装備について多くを明かしていませんが、映像では意外にも思える武器の数々が登場しました。
「お話できる範囲でいうと、『FBC: Firebreak』の隊員たちは変貌アイテムをアタッチメントとすることで超常現象的に強化された兵器の携行を許されています。」とプハ氏は言います。「映像でご覧いただいた、庭先にあるようなドワーフ像などもそうです。こうしたものは本作でいうアルティメットのようなもので、軽はずみに使用できるものではありません。何より、こうした兵器は檻の中の猛獣なのです。使用することは、味方へ襲い掛からないように祈りつつ、倒して欲しい敵に向かって猛獣を放つことと同じなのです」
クラシックなジャンルに Remedy 流のひねりを加えた『FBC: Firebreak』ですが、その開発に携わったチームと会話を重ね続けると、スタジオにとって新しいことに挑戦しつつも、大目標としてファンに愛される要素を忘れないようにすることも掲げていたことが明らかになりました。様々な要素を組み込むため、『FBC: Firebreak』の開発にはマルチプレイヤーの経験を持つ新しい才能をチームに迎えつつ、ベテランの Remedy クリエイターたちが中心的な役割を担いました。
「ゲーム タイトルを作るたびに挑戦があり、少しの調整を求められます」とプハ氏は述べています。「『FBC: Firebreak』はオンライン協力型シューターということで、多くの面で非常に異なる考え方が求められました。各ステージのデザインやゲームプレイへのアプローチ、ゲーム タイトルのリリース後にも速やかなトラブル シューティングを行うための技術やバックエンドの調整、マッチ メイキング、パッチを配信するペース、コミュニティの管理など、考えなければならないことは多岐にわたるため、非常に挑戦的な開発現場です。」
「ただ、長年の経験を持つベテランの Remedy 開発者チームが『FBC: Firebreak』の開発に情熱をもって取り組んでいて、プログラミングからステージのデザインまでのあらゆる作業をこなしている姿を見ていると、非常に嬉しく思えるのです。少数精鋭に加えて高い士気を維持した開発チームが、迅速に創造しているのが『FBC: Firebreak』なのです」
また、これまでの Remedy のゲームと大きく異なる点のひとつとして、『FBC: Firebreak』は時間の経過と共に、思慮深く進化していくように設計されていることをプハ氏は強調します。
「『FBC: Firebreak』は手軽に始めやすく、すぐに理解できるものであるべきです。同時に、セッションへと飛び込む際に装備などを準備するのに何時間もかかるような体験であってはならないのです」とプハ氏。「このタイトルは友人たちと一緒に、そして気軽に楽しむためにあります。奥深い進行度やアンロック要素がないわけではありませんが、毎日かかさずログインをしてアイテムや素材を収集しなければならないようなゲームではありません」
「私は『FBC: Firebreak』を GaaS (サービスとしてのゲーム) とは呼びませんが、リリースされた後からも新しいコンテンツを定期的に実装してプレイヤーの皆さんにワクワクを提供し、本作における体験を新鮮に保ち、育ちゆくコミュニティと交流する場を設け、一度離れたプレイヤーが再び戻ってくる居場所を作ることには意義を感じています」
ここで、これまで Remedy の強みだったナラティブな体験への適性が輝きます。カヤッタ氏は続編ではないことを強調しつつ、『FBC: Firebreak』が『Control』の後の「Connected Universe」を舞台としており、その世界から新しい形で物語を継続的に届ける手段となると述べています。『Control』をプレイしていなくても内容は理解できるようになっていますが、プレイ済みの人にとってはより多くの楽しみが待っていることは間違いないでしょう。
「私はプレイヤーの一人として『Control』に夢中になり、クレジット ロールが流れたあとに残ったのは、ストーリーの余韻というよりは、世界観へのリスペクトだったんです」とカヤッタ氏。「ストーリーは定義された時間軸で進行し、その中には大小様々なイベントが散りばめられているものです。逆に、世界そのものは概念的です。没入感があります。無数のストーリーが収まるようなキャンバスとも呼べるものこそ、マルチプレイヤー ゲームが目指すべき姿だと私たちは考えています。私たちが贈る一つの物語ではなく、プレイヤーの皆さんがゲーム内で体験する何百万ものユニークな物語を内包しうるもの、それこそがマルチプレイヤー ゲーム、という考えです」
「もちろん、これまでに作ったシングルプレイヤー ゲームを追ってくれている皆さんにとっても『FBC: Firebreak』が、「Connected Universe」の歴史と伝承の中でも正統で重要な位置を占める存在となるように気をつけなければなりません。これまでのタイトルに見られたようなナラティブなスタイルは、この種のゲームとは水と油の関係です。ストーリーよりも世界観、シングルプレイヤーよりマルチプレイヤー、仲間とのボイス チャット、探検よりもアクション、といった違いを挙げれば、『FBC: Firebreak』を完全に独立した体験として作った理由が理解できるでしょう」
「とはいえ、本作の中で『Control』の世界は続いています。連邦操作局の新たな側面も垣間見えます。そこで働く人たちとも出会えますし、オールデスト・ハウスをさらに探索する内に、より奇妙なものにも遭遇するでしょう。なにより、新旧の世界を全く新しい視点から体験できるのです」
その新しい視点は、初公開となった映像からもはっきりと見て取れます。『Control』はしばしば奇妙で、時にはユーモアにあふれていましたが、同時に剣呑ともいえる、まじめな雰囲気の中で物語が進行します。そこで筆者は、『FBC: Firebreak』がもう少し軽快なトーンの中で楽しめるのかを尋ねました。
「『FBC: Firebreak』では超常現象が蔓延る世界に閉じ込められ、命を懸けて戦っている人たちを描きます。私たちがふかふかのソファに座って、安全な場所から「面白い」と感じるようなこと、たとえば「Connected Universe」の世界の中で殺人衝動をもった付箋が増殖し、アリのような群知能を獲得するところを実際に目の前で見てしまったなら、きっと恐ろしい体験になるでしょう」とカヤッタ氏は言います。「予想外の奇妙さ、そして真剣な切迫感。これこそが『Control』がプレイヤーの皆さんにかけた魔法の正体なのです」
「ですから、必ずしも『FBC: Firebreak』が軽い調子の体験になるとは言えません。全体的なトーンを探るうえで大切にしたのは、これまでと同じ「不条理」と「真面目」という根本的な要素を維持しつつ、それを本作に最も適切な形で合わせる方法を見つけることでした。」
『FBC: Firebreak』について知れば知るほどに、このタイトルの開発が試験的なもの、というよりは Remedy にとって自然なネクスト ステップのように感じられます。単なるサイド プロジェクトのように見えるかもしれないものが、実際にはスタジオにとって、限界を押し広げ続ける方法なのでしょう。Remedy は常にストーリーやアクション、そして独特な表現法を大切にしてきており、見た目は違えど、『FBC: Firebreak』もその系譜を継ぐゲーム タイトルなのです。
筆者は、これがスタジオにとって真なる進化なのか、そして Remedy Entertainment の創り出すゲームの概念が広げられた瞬間なのかを問いました。これに対し、プハ氏は「正直、そうは感じていません。あるいは、まだ忙しすぎて気づいていないだけなのかもしれません」と笑います。
「むしろ、進化を感じているのはここ 4 年ほどで、複数のゲームを平行して開発し始めてからになるかもしれません。2019 年以降、当スタジオは毎年 1 本のゲーム、またはその移植版をリリースしてきましたが、これは 400 人ほどの規模の会社にしては驚くべき成果だと思います」
「『FBC: Firebreak』のリリースは、オンライン ゲームであることから大きな変化をもたらすでしょう。リリース後も継続的にサポートを行っていくこと……」
と語っていた彼は、しばし考えを改めるかのように続けました。
「やはり、これは Remedy の進化の一つの形かもしれません」
『FBC: Firebreak』はXbox Series X|S、Windows PC向けにリリースされ、Game Passでも発売初日からプレイできます。
※この記事は米国日時 10 月 17 日に公開された “Xbox Partner Preview | FBC: Firebreak – Learn More About Remedy’s First Ever Multiplayer Game” を基にしています。