
『インディ・ジョーンズ/大いなる円環』: 謎をしかけるための「仕掛け」の創造
ラーの杖飾りで光を屈折させたり、聖杯神殿の謎を解明したりと、「インディ・ジョーンズ」シリーズでは、ストーリー展開の中にたびたび謎解きの要素が取り入れられてきました。多くの点で、それは伝統的な映画制作よりもゲームの手法を彷彿とさせます。謎に挑戦し、それがどのような仕組みになっているかを次第に理解し、「あっ!」と気付く謎解きの楽しさは、クラシックな映画と同じように、多くのゲームのカギとなっています。
ご想像の通り、『インディ・ジョーンズ/大いなる円環』では、いたるところで謎解きが登場します。当然、それらはメインのストーリー展開を支えるものであり、本作のオープン ワールドには、己の精神力を試すのが好きな人のために、任意の謎解きもたくさん用意されています。しかし、だからといって本作は、映画に出てきた内容をそのままゲームに移植するような安易な作りにはなっていません。
「謎と罠は『インディ・ジョーンズ』の根幹であり、本作ではそれらをうまく表現することが非常に重要でした」と、デザイン ディレクターのイェンス アンダーソン (Jens Andersson) 氏は説明します。「ただ、ご想像の通り、映画で見たものがそのままゲームに転用されているわけではありません」
錠と鍵

映画では、インディにロジックを飛躍させることで展開を進めることができますが、ゲームではプレイヤーに真に迫る冒険家としての体験を提供する、劇中のインディ自身がそうだったように、謎のすべてのピースを自分で解いていく力を感じられる必要があります。映画が、「インディ・ジョーンズ」らしい謎の原型、そのルックと手触りを作り上げるのに役立ったものの、(本作の) それぞれの謎解きのディテールはゼロから作り上げる必要があったとアンダーソン氏は話します。
つまり、MachineGames は、解き方を明かすことなく、あらゆるヒントを提供する空間を作らねばなりませんでした。中身の謎は、従来のゲーム システムをベースにしながらも、つねに独創的である必要があります。そして、その報酬、特に任意の謎解きのご褒美は、すべてを解いた努力に見合うものである必要がありました。
「ゲームに入れるべき謎と、そうでないものを正確に把握するには、長いプロセスが必要でした」と、アンダーソン氏は続けます。「本作のような大作アドベンチャー ゲームに、面白くて手応えのある謎をいかに組み込むか決める際に、参考になるものはあまり多くはないものです。私たちは、多くの人にとって遊びやすく、プレイヤーが決して行き詰まらないようにしながらも、世にある大作アクション アドベンチャー ゲームではあまり見られない、実際に頭を使って考えなければならないような、すごい謎を用意したいと考えました」
「本作は一人称視点が主体で、物理的なインタラクションが多いため、謎の形式にも向き不向きがあるのですが、壮大な墓から小さな謎まで、バラエティに富んだ謎たちが仕上がりました。ゲーム全体を通して新鮮な体験を提供できますし、このようなバリエーションは本作にぴったりです」

ゲーム内のひとつのエリアをとってみても、そのバリエーションを感じることができます。『インディ・ジョーンズ/大いなる円環』の「ギゼー」エリアを探検していると、アクション重視の瞬間が訪れたかと思えば、壁画に示された暗号をじっくりと解読したり、単にサソリに囲まれて脱出方法を問われたりといった、罠だらけのダンジョンへと誘われる謎に遭遇します。
これは本作のほんの一エリアでの出来事に過ぎません。『インディ・ジョーンズ/大いなる円環』の魅力は、世界中を旅できることです。アンダーソン氏は、それぞれの場所でどのような謎が登場し、誰が作ったのか? 古代なのか、現代なのか? 何につながるのか? まで考え抜いたと明かしています。「ギゼーの墓で出会う謎解きは、スコータイ朝のクメール人が作った仕掛けとは大きく異なります。敵の拠点に潜入する際には、暗号やその他の道具を使ってメッセージを解読しなければならないこともあります」
「おかげで、謎のデザインの出発点は無数にあり、その中から選ぶことができました。ボードにピースをどう配置するかという抽象的な考えから始めることもできました。あるいは、私たちの素晴らしいアート チームが作り上げた奇妙なビジュアルに着想を得ることもありました。ゲームに新しい場所が登場するたびに、私たちデザイナーが出発点として使える新しいインスピレーションが提供されるわけです。大事なのは、探索するのも実行するのも楽しいということ。「あっ!」と思わせるような複数のステップを踏むこともよくあります。
古代の秘密

謎の深淵さにもバリエーションはありますが、チームの重要な目標は、その大きさと難易度を直接結びつけないことでした。中心となるストーリー展開には、本作で最も幅広い謎のシークエンスが用意されていますが、謎解きが必須である場合、難しすぎるとプレイヤーによっては挫折してしまう恐れもあります。同様に、謎解きのファンが簡単すぎると感じるのも避けたいところです。そこで、本作ならではの「冒険難易度 (Adventure Difficulty)」設定が登場し、プレイヤーの好みに合わせた遊び方ができるようになっています。
「当然ながら、大きな謎の多くはストーリーと複雑に絡み合っています」とアンダーソン氏は言います。「あらゆる層のプレイヤーに楽しんでもらえるよう、本作の難易度には「お手軽 (Light)」も用意されています。この難易度でプレイしても謎解きの楽しさは味わえますが、通常の難易度ほど多くの手順を必要としない分、難易度が抑えられています」
また、もし行き詰まっても、インディには謎解きの手助けとして使用できる道具があります。彼のカメラを取り出して写真を撮ると、ヒントをもらうことができるのです。
「私を含め、特に難しい謎を解くためにとことん時間をかけるのが楽しい人もいますが、それは誰にでも当てはまるわけではありません。同時に、探索に少し時間がかかっているだけで、ヒントをもらうことをうるさく促されるのも煩わしく、ストレスが溜まり、ゲーム体験を損ねてしまうため、押し付けがましくなくヒントを出す方法を考えました」

「インディのカメラを任意選択のヒント機能として使うことは、最適な解決方法ではないかと考えました。謎を調べていくと、さまざまなヒントが用意されていることがわかります。そのままじっくりと時間をかけることもできますし、少し手助けが必要だと思ったら、カメラを出して写真を撮るだけでヒントを求めることができます。ヒントが足りない場合は、さらに詳しいヒントを求めて写真を撮り続けることもできます」
また、筋金入りの謎解きファンのために、本作にはヒント機能がいっさい使えない、ゲーム中最も難しい、本当に手応えのある任意の謎も用意されているとアンダーソン氏は予告しています。無理に挑戦する必要はありませんが、もし興味があれば、真の冒険家にふさわしい試練を覚悟しておいてください。
「インディ・ジョーンズ」の映画における謎の楽しさは、おもにインディと一緒に謎を解いてみることにあります。ゲーム内でその実践方法がどれだけ異なることになろうと、目標は同じです。インディとなってピースを所定の位置にはめ込むことで、あなたは根源的なスリル――報酬そのものと同じくらいの財宝を得るでしょう。
※固有名詞の日本語訳は仮称です。
※この記事は米国時間 2024 年 12 月 3 日に公開された “Mechanisms Become Mechanics: Inventing Puzzles for Indiana Jones and the Great Circle” を基にしています。