「Year of the NINJA」開幕: 『NINJA GAIDEN 4』 & 『NINJA GAIDEN 2 Black』開発者インタビュー

剣戟の応酬、極限の難易度。

アクションゲームを愛するゲーマーに「忍者ゲームといえば?」と聞けば必ず名前が挙がる「NINJA GAIDEN」シリーズ。アーケード ゲーム『忍者龍剣伝』から端を発した本シリーズは 2D、3D を含む様々な姿形で、忍者らしい俊敏な動きと目を惹く剣術と忍術で敵を倒していくことをテーマに、爽快感抜群のアクション ゲームとしてファンを楽しませてきました。

特に、2004 年に発売された Xbox 版『NINJA GAIDEN』以降は滑らかな操作性や華麗なアクションが際立ち、アクション ゲームの金字塔とも呼ばれる存在に。熟練するほどに主人公であるリュウ・ハヤブサが自在に動くようになり、手応えのあるバトルを楽しめるようになることが最大の魅力でした。

難しいけど諦めたくない、そしてクリアしたときの達成感がクセになると評判の「NINJA GAIDEN」シリーズ。そんなタイトルを世にこれまで送り出してきた Team NINJA は創立 30 周年目を今年迎え、2025 年を忍者の年、「Year of the NINJA」と位置付けています。

今回、「Developer_Direct」でのサプライズ発表として、13 年の時を超えて新たなナンバリング タイトルである『NINJA GAIDEN 4』、そして『NINJA GAIDEN 2 Black』の映像が公開されたことを受け、Xbox Wire 編集部は本作のプロデューサーを務める株式会社コーエーテクモゲームスの Team NINJA ブランド長 安田文彦氏、そして『NINJA GAIDEN 4』のプロデューサーとディレクターを担当するプラチナゲームズ株式会社の中尾裕治氏に話を伺いました。

新たな「NINJA GAIDEN」の世界

長く愛されてきた「NINJA GAIDEN」ですが、今回発表された『NINJA GAIDEN 4』は実に 13 年ぶりのナンバリングタイトル。Xbox で言えばコンソール 2 世代分の空白を超えて最新作を制作することになった経緯について尋ねたところ、安田氏は「本当はもっと早く制作を進めたかったんです。「NINJA GAIDEN」シリーズを期待されている声は、長く、多くの方から届いていました」と Team NINJA としての想いを言葉にしてくれました。「コーエーテクモゲームス社長の鯉沼とプラチナゲームズ社長の稲葉氏が懇意にしていたこと、そして Team NINJA として特別な思いを持っている『NINJA GAIDEN』を共に開発することができる、最も優れたチームがプラチナゲームズであったこともあり、両社での共同開発を模索していたところ、Microsoft のフィル (フィル スペンサー) 氏の後押しを受け、Xbox Game Studios を含めた三社で「NINJA GAIDEN」の新しいナンバリング タイトルの制作へとコマを進めることができました」

「Developer_Direct」内の映像で初めてその姿を現した『NINJA GAIDEN 4』は、『3』の正統な続編として位置づけられ、これまでのシリーズ タイトルでも描かれてきたダークでハードな世界観を継承しつつ、プレイヤーは新主人公の「ヤクモ」としてプレイすることになります。「『NINJA GAIDEN 3』からは結構な年数が経過しており、プレイヤーの皆さんは一変した東京に降り立つことになります。本作のキーワードの一つである黒龍が再臨した、崩壊しかけている東京の中で、ヤクモはリュウ・ハヤブサと戦いを繰り広げることになるでしょう」と中尾氏は本作のストーリーを説明します。

新主人公の起用を決めた理由を尋ねると、「時間を空けての新作ということもあり、Team NINJA の方々と開発を進めるにあたって、新規プレイヤーにもすっと受け入れてもらえるよう、新主人公を据えようという話になりました」と中尾氏。「当然、従来のファンにも楽しんでほしいことから、リュウ・ハヤブサは作中の随所に登場し、ヤクモにとっての大きな壁、そして成長の目標を指し示す存在として君臨します。また、彼として戦える場面などを通してその存在感はしっかりと出していく予定」であるということからも、『NINJA GAIDEN 4』でも超忍リュウ・ハヤブサの健在ぶりは十分に楽しめそうです。

『NINJA GAIDEN 4』で待ち受ける逆境

「Developer_Direct」の映像の中で、新主人公のヤクモはワイヤー アクション、レール アクションといったスタイリッシュかつ刺激的な動きを見せています。こうしたこれまでにない新要素がどのように加えられていったかについて尋ねたところ、中尾氏は『NINJA GAIDEN 4』の根底にあるテーマの一つについて説明してくれました。「本作ですごく大事にしていることとして、逆境というキーワードがあります。ステージの始まりから終わりまで、そして次へのつながりも含めて、全てをヤクモにとっての逆境として描くことに徹しています。ヤクモが立ち向かうべき逆境、というのは「NINJA GAIDEN」ならではのバトルで最も体感できるところですが、戦闘からの移動を含めて、常に緊張感が伴っている体験にするため、今回はレールやワイヤーなどのアクションによる疾走感ある遊びを挟むことで、途切れることのない逆境感を演出しています」

また、発表映像ではサイバーパンクな姿に変貌した東京に加え、常に降り続けているかのような雨の表現が印象的でした。「『NINJA GAIDEN 4』では新旧の要素を融合させていくことを狙いました。今回の物語の舞台となる東京は魔界からの影響を大きく受け、著しく変容してしまったことでこのような見た目となっています」と中尾氏は黒龍の瘴気の雨がもたらす災厄について解説します。「また、本作では雨を大きなビジュアルのテーマに据えています。例えばキャラクターの濡れ方、雨粒の地面への滴り方など、様々な雨の表現をグラフィックの肝にしています。また、ずぶ濡れになりながらも荒れ果てた戦場を駆け抜け、多勢の敵に立ち向かうヤクモの姿を見ていただければ、ビジュアルにおいても「逆境」を感じ取ってもらえるかと思います」と、中尾氏はビジュアル面においてもシリーズの持つ独特なダークでハードな世界観を踏襲しつつも、『NINJA GAIDEN 4』ならではの特色も加えられていることを明かしました。

さらには期待できる難易度についても、中尾氏はインタビュー内で言及してくれました。「『NINJA GAIDEN 4』はこれまでのシリーズの様々な良さやエッセンスをまとめました。基本的にはこれまでのシリーズを良いとこ取りしつつ、現代に合わせて昇華をさせてきたのですが、その中でも『NINJA GAIDEN 2』の良さは個人的にかなり感じていたことから、『2』の特徴は『NINJA GAIDEN 4』をプレイしていると強く感じられると思います」

ここまでの話を聞くと、『NINJA GAIDEN 4』には絶え間ない逆境、そしてリュウ・ハヤブサという超忍との相対、そして非常に高い難易度で有名な『NINJA GAIDEN 2』から多くの要素を取り込んでいることから、想像を絶する高難易度要素が多く込められているように感じられます。しかしながら、本作はアクション ゲームにおける二大巨塔、Team NINJA とプラチナゲームズのタッグ チームによって裏打ちされた、比類なき「NINJA GAIDEN」体験であろうことも、話を続けていくうちに分かりました。「昨今のアクションゲームと「NINJA GAIDEN」というのは敵と戦うときの対等さ、いわば公平性において決定的な違いがあり、それはシリーズを通して継承されてきている、トレンドを超越したものであると私は考えています。「NINJA GAIDEN」の敵は強固な防御を誇り、時と場合によっては激しい攻撃を放ってきますが、そこにプレイヤーとの性能差は感じられないような設計になっているのです」と中尾氏は本シリーズのゲーム バランスに関する特徴を詳しく述べました。

「刹那的な攻防の転換もあり、まるで格闘ゲームで対人戦を繰り広げているような感覚があります。こうした点は『NINJA GAIDEN 4』で進化をさせつつも、根幹的なところはこれまでもシリーズを楽しんできた方々が本作を手に取ったときにも『あ、「NINJA GAIDEN」だ』、とすぐに感じ取ってもらえるようになる形にまとめています」

新時代の「NINJA GAIDEN」

「NINJA GAIDEN」ならではの、絶妙な調整によって生み出される公平性。その実現にどういった苦労があったかを尋ねたところ、中尾氏は笑いまじりに教えてくれました。「アクションの手ざわりについては、具体的に話すとかなーり長くなってしまいます (笑)。敵との攻防を繰り広げていくうえで、攻撃を差し込んだ時にスピード感を損なわないようにしつつ、気持ちよさを担保することに関するバランス感覚は「NINJA GAIDEN」において非常に丁寧に作られていると思っています。作り始めて、一通り機能などを入れてテストしてみると、やはり細かい調整が必要となった部分の手ざわりについては非常に苦労をした記憶があります。さらにはリュウ・ハヤブサを『NINJA GAIDEN 4』に登場させるにあたって、従来のユーザーにこれまで味わっていた気持ちのいい体験をしてもらおうと調整を進めた際にも、Team NINJA のみなさんとディスカッションを多く重ね、感触を近づけていきました」

安田氏も「手ざわりの部分については Team NINJA もかなり入らせていただいています。敵との戦闘の公平性というのは、究極のプレイアビリティが前提としてあるものになるので、しっかりとした操作性など、もっと踏み込んだ形で突き詰めましょう……ということで声をかけていました。うるさいだろうなぁ……と思いつつも (一同笑)」と究極の「NINJA GAIDEN」体験を実現するために、社の垣根を超えた連携が行われたことを教えてくれました。

綿密なチームワークによって「NINJA GAIDEN」としての体験を追求した『NINJA GAIDEN 4』の中で、とりわけ目立つのは主人公のヤクモが操る、これまでにない忍術である「血楔 (けっせつ) 忍術 鵺 (ぬえ) の型」です。中尾氏はこの忍術を「自身や敵の血を操り、巨大な武器として複数敵を思いっきり斬ることができるもの」とし、これまでの「NINJA GAIDEN」から発展したアクションの追加についても説明をしてくれました。

「鵺の型をメインにヤクモは戦っていき、そのうえで条件を満たすと『血殺 (けっさつ) 』という、敵を一撃で真っ二つに出来る技を発動できます」と、中尾氏はこれまでのシリーズでのひりつくような一対一での戦い、または複数の敵を相手取りつつも、上手く立ち回り一対一に持ち込むことがセオリーだったところに、新たな選択肢を生み出したと言います。「今回はそういった緻密な遊びに加えて、鵺の型による広範囲かつ大ダメージな一撃によって形勢を逆転する要素を新たに加えています」

「敵に囲まれ、激しい攻撃にさらされたプレイヤーが状況を一気に打開することで抑圧からの解放感を感じられるこのバトル システムは、今までの「NINJA GAIDEN」から新しく加わった要素として、新規ユーザーの皆さんにも楽しんでもらえるものを目指しました」

Team NINJAとプラチナゲームズがおくる究極の忍者アクションを Xbox で

ハイエンドのアクション ゲームを制作していることで有名な両者ですが、中尾氏によれば『NINJA GAIDEN 4』を制作する過程で、それぞれの特性や強みが分かるようになり、勉強になったと言います。

「実際にそれぞれのタイトルを見ていくと、プラチナゲームズで作っていたものとテイストがやっぱり違うなと感じる部分がありました。非常に細かな違いも多いのですが、アクションの手ざわりは特に違ったなという印象です。敵との攻防、敵に攻撃した際のリアクションといった細部において、プラチナゲームズは一撃一撃を派手に重く、そして瞬間ごとの体験を重視しているのに比べて、「NINJA GAIDEN」シリーズは細やかな手ざわりの気持ちよさを経て、総合的なアクション ゲームとしての体験を非常に高いレベルへと磨いていっているんです。そうした発見は、今回プラチナゲームズとして勉強をさせてもらったと思っています」

Team NINJA とプラチナゲームズの豊かなクリエイティブの経験と才能を結集した『NINJA GAIDEN 4』が、「NINJA GAIDEN」シリーズにゆかりあるXboxでプレイできるようになることについて尋ねたところ、安田氏は Team NINJA でこれまで Xbox で発売してきた数々のタイトルを振り返りつつこう述べました。「「DEAD OR ALIVE」シリーズや、「NINJA GAIDEN」シリーズ……特に初代『NINJA GAIDEN』、『NINJA GAIDEN Black』、『NINJA GAIDEN 2』を Xbox で発売したという歴史があります。長らく空いてしまいましたが、今回改めて Xbox プレイヤーに楽しんでいただけることを嬉しく思います。さらに、Game Pass への追加も予定されていることから、より多くの方々に触れていただく機会になっていることに期待をしています。」

これに同調した中尾氏も、学生時代にシリーズのファンとなった当時を振り返りつつ感想を述べました。「私としても、Xbox 360 で『NINJA GAIDEN 2』をプレイしていた過去があるので、改めて Xbox で最新作をプレイできることは非常に嬉しく思います。現在は Xbox Series X 上で『NINJA GAIDEN 2』を未だにプレイしていることもあり、「NINJA GAIDEN」シリーズ タイトルが Xbox に集結して、いずれもプレイ出来る状況を作れることは開発者としても、いちファンとしても喜ばしいことです。」

「Year of the NINJA」は始まったばかり: まずは『NINJA GAIDEN 2 Black』を本日からプレイ

「Developer_Direct」では、『NINJA GAIDEN 4』の発表に加え、『NINJA GAIDEN 2 Black』が本日まもなく Game Pass でプレイ出来るという嬉しいサプライズが発表されました。『Black』として銘打たれた本作について安田氏に尋ねたところ、プロジェクトがどのように発進したか、そしてアップデートされた内容について詳しく教えてくれました。

「今回、『NINJA GAIDEN 4』と同時の発表に加えて同日配信、ということで驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。(『Black』の開発理由として)一番大きいのは、これまでプレイされてきたシリーズのコアなファンの中に「リュウ・ハヤブサはどうなるんだろう」という意見をお持ちになる方もいるかもしれないこと。そんな皆さんや、シリーズを初めて知る方に、最新作である『NINJA GAIDEN 4』が出るまでの間、リュウ・ハヤブサとしてプレイしてほしい、と考えたことが最初のきっかけです。『NINJA GAIDEN 2』を選んだ理由として、これまでで一番ソリッドなアクション ゲームとしてプレイしていただけるのが本作であることが挙げられます。『Black』とつけた理由としては、過去に『NINJA GAIDEN Black』が初代の決定版として発売されており、今回も同様の認識をしてもらいたい思いから、このネーミングを選びました」

その他にも、『NINJA GAIDEN: マスターコレクション』を 2021 年に発売した際に、よりオリジナルの『NINJA GAIDEN 2』に近い体験をしたい、というファンの声を聞いていた安田氏。Unreal Engine 5 で制作された本作について、「過去にオリジナルをプレイされた方や現代のアクション ゲームとしてプレイしていただく方に対しても、しっかりと応えられている内容になっています」と太鼓判を押してくれました。「敵を斬った際の表現や武器強化フローなど、できる限りオリジナルの表現に忠実であろうとしています。さらに、『Σ2』などのタイトル特有の要素も集約され、本来の歯ごたえや体験そのものを棄損しない程度に現代に合わせた様々な調整やオプションの追加を行っています」と新旧ファン共に楽しめる仕上がりであることを氏は説明しました。難易度については依然高いままでありつつも、あらゆるプレイヤーが怯えずにチャレンジできるように幅広い設定が用意されているようです。

結び

Team NINJA の創立 30 周年目となる 2025 年、題して「Year of the NINJA」がこれ以上なくふさわしい形で開幕したことを報せる「Developer_Direct」での各種発表ですが、まさに忍者のように潜んできた Team NINJA の安田氏、そしてプラチナゲームズの中尾氏には最後に、それぞれ思いの丈を語ってもらいました。

プラチナゲームズ株式会社 中尾裕治氏

「今回、『NINJA GAIDEN 4』を無事に発表できて本当にありがたいと思っています。私自身が「NINJA GAIDEN」の大ファンであったこともあり、ファンとしても嬉しいです。現在、『NINJA GAIDEN 4』は大体 70 ~ 80% ほど完成しています。仕上げのターンに入った今、Team NINJA さんと相談しつつ、密に連携を取りながら磨き上げてまいります。これからも出てくる情報でその全貌と面白さがますますご理解いただけると思いますので、そちらを楽しみにお待ちいただきつつ、私自身はいちファンとしての知識を活かしながら皆さんにご満足いただける体験をお届けできるように、引き続き頑張っていきたいと思います」

株式会社コーエーテクモゲームスTeam NINJAブランド長 安田文彦氏

「本当にお待たせしました……という気持ちが一番大きいです。非常に長い間、シリーズを応援してくださっている皆さんの声はずっと聞こえていました。今回プラチナゲームズさんと共同で制作している『NINJA GAIDEN 4』ですが、その開発をずっと後押ししてくれていたのはシリーズ ファンの皆さんです。今回この発表で喜んでいただければ非常に嬉しく思いますし、期待の声に応えられるように制作の方も進めてまいります。今回は映像での発表となりましたが、やはり『NINJA GAIDEN 4』はアクション ゲームですから、イベントなどで実際に触っていただける機会も今後検討していく予定です。ぜひ楽しみにお待ちください」