平凡な生活から未知なる旅へ飛び込んでいくヒロイン、魔法の武器や能力を駆使し、スキル ツリーを成長させていく……。一見、『South of Midnight』はよくある古典的なアクション アドベンチャーだと思うかもしれません。しかし、ほんの数分プレイしただけで、そんな印象はどこかへと流れていってしまいました。これほど独特な世界観を持ったゲームを、私はこれまで見たことがありません。第 3 章までプレイすれば、誰もが何度も何度も衝撃を受けるはずです。この舞台、このストーリー、さまざまなアイデア、そして音楽さえも、すべてがまったく新しいものなのです。そのすべてが、やりごたえのある戦闘と、道中の楽しい探索によって支えられています。
今回のプレビューでは、主人公ヘイゼルが洪水にさらわれた母親を捜しに出発するところから始まります。彼女の物語に足を踏み入れる前に、彼女は自身が「ウィーバー (Weaver)」であることを知ります。ウィーバーとは、現実をつなぎ止める糸を操り、戦ったり探索したりできる古代の魔法を使える者のことです。ヘイゼルの周囲では、現実がゆがんでいるように見えており、私たちは彼女が知らないアメリカ南部風の田園地帯に足を踏み入れていきます。そこは、場所によっては彼女に対して敵意を抱いているところもあります。
これまでのトレーラーでは、『South of Midnight』の世界観と物語が紹介されてきましたが、実際にプレイしてみると、アクション性に重点を置いたゲームであることがわかります。ゲームの世界を旅していると、油膜のように光を屈折させるエネルギー球体を目にするでしょう。その中に入ると、南部の伝承に登場する怪物「ヘインツ (Haint)」と対峙することになります。ヘインツはさまざまな姿をしており、突進して近接攻撃を仕掛けてくるものもいれば、逃げながら遠距離攻撃を繰り出してくるもの、さらにはグロテスクな昆虫を吐き出してくるものもおり、ヘイゼルの旅路を遮ってきます。どのヘインツを最初に倒すべきか、状況に応じて戦略を立てることが、本作の戦闘において重要な要素となります。
『South of Midnight』の戦闘においても、手が抜かれることはありません。多くの場合は一度に複数のヘインツと対峙することになり、それぞれが一撃でプレイヤーの体力を大幅に削り取ってきます。こうした戦闘が始まった瞬間、ゲームは無駄のないスピーディーなアクション ゲームへと変貌します。きらめくアリーナを飛び回りながら、状況に応じて攻撃手段を切り替えていくことになり、数あるうちの一つである近接攻撃のコンボは最も素早く敵を倒せる手段ながらも、隙が大きいので反撃される可能性が高まります。魔法を使ったり、敵を押し引きしたり (小さい敵を武器代わりに投げ飛ばすこともできます)、縛り上げたりすることも可能です。それぞれのアクションをアップグレードすることによって、さらに専門性を高めることもできます。私は、縛り上げた敵に追加ダメージを与えるパッシブ アビリティを選びました。これにより、主な脅威を素早く無力化して倒すことができるようになりました。戦闘は攻撃的に振る舞うことが大切な要素となります。完璧な回避を行えばそれが攻撃へと転じ、あなたが元々立っていた場所で魔法の爆発が巻き起こります。戦闘アクションの第一印象は「素晴らしい」のひと言で、予想以上に多くの要素が詰まっていると感じました。
そして、キャラクターの動きそのものも注目すべきポイントです。それぞれのキャラクターは、手作りのストップ モーション アニメ人形であるかのように作られています。カット シーンでは、ストップ モーション アニメのようなスタイルで、華やかでありながら不思議な動きを見せてくれます。しかし、プレイヤーが操作するときは、アクション ゲームとしての即時性を失うことなく、ボタンを押すとすぐに反応して美しくスムーズな動きを見せます。Compulsion Games がカットシーンと戦闘シーンの 2 つの状態をスムーズに移行させているかという点に、本作の芸術性の境地が見え隠れしています。
芸術性は、キャラクターを取り巻く世界観そのものについても遺憾なく発揮されています。島々はマングローブの生える沼地から突き出ており、点在する廃屋や朽ちかけた通路は、自然の猛威に耐えかねて崩れ落ちています。巨大な棘の塊が道を塞ぎ、大きな桃が水面に浮かんでゆっくりと腐りゆきながら漂っています。高台から見える景色は、移動できる場所が巧妙なレベル デザインとしてコンパクトにまとまっていることがわかるのですが、その見える世界は実際に触れることができる範囲をはるかに超えて広がっており、旅が壮大なスケール感で繰り広げられるであろうことがわかります。この場所はゲームにとって珍しいスリリングな場所であり、美しい照明効果によってすべてがまとめられています。太陽が低い位置にあるため、樹木の生い茂る林に光が差し、立ち込める霧があなたを包み込みます。
この世界を移動するには、「ウィービング (Weaving)」の力 (戦闘魔法は探索にも使用できます) を活用します。過去の遺物を呼び戻して足場を確保したり、水浸しの地形を滑空したり、周囲を押し引きして隠された道を発見したりします。特定のルートが存在しますが (右スティックを押すとガイドされます)、隠れた場所には能力を強化する素材や、物語を深めるためのメモが隠されています。自分の能力と周囲の世界が示す手がかりを理解すれば、メイン ルートを進むのと同じくらい、このサイド ルートにも時間を費やすことになるでしょう。

メイン ルートを進めると、ゲームの語り部であり仲間でもあるキャラクターの「キャットフィッシュ (ナマズ)」に出会います。キャットフィッシュは現在、人型の木に捕らえられており、彼を解放するには、ゲームのロゴにも描かれている「ボトル ツリー」から魔法のボトルを集め、そのボトルを使って木とその周辺を歪めている潜在的な精神的苦痛を吸収する必要があります。
少し突飛に聞こえるかもしれませんが、あなたが癒やそうとしている巨木のトラウマは、実は驚くほど暗いものであることがすぐに明らかになります。ネタバレになるので詳細は避けますが、この地域に住まうごく普通の人が、悲劇的に短くなった生涯とその苦悩を通して、地平線を覆い隠すほどの存在へと変貌した経緯が明らかになるのです。
また、『South of Midnight』の魅力のひとつは、屈託のない表現にあります。ヘイゼルは平気で悪態をつきますし、現実問題として、彼女の立場に立ってみれば、皆さんも同じことをするでしょう。そして、彼女が明らかにする物語は、私たちが慣れ親しんできたおとぎ話とはかけ離れたものです。Compulsion Games はこれを「サザンゴシック (Southern gothic)」と呼んでおり、これを通して語られる物語は本当に暗いものです。ただし、ウィーバーであるヘイゼルがこの壊れた世界で果たさなければならない役割は修復である以上、世界に満ちている恐怖から目を背けることはできません。

『South of Midnight』では、さらに驚きの展開が待ち受けています。戦闘や探索の流れを把握したと思った矢先、プレビュー体験の最終段階に入ったと思った直後から状況が一変しました。不死身の何かがプレイヤーを追いかけ始め、戦闘は一転して逃走劇へと姿を変え、スリリングな展開の中で、生き残りをかけてジャンプや滑空、壁走りなど先ほどまでのアクション ゲームとしての動きを組み合わせて、安全な場所まで逃げ延びることを求められます。『South of Midnight』は、プレイヤーの置かれている状況を一変させ、プレイしているゲームを意図的に変化させることを躊躇いません。
プレビューの最後の見せ場となるシーンは、同様のゲームプレイの変化が楽しめます。ゲーム内の主要エリアでは、現実に存在する民間伝承から生み出された巨大な生き物がヘイゼルの行く手を阻むことは知っていました。しかしここで、『South of Midnight』に登場するすべての伝承上の生き物たちがお約束のボス戦で終わるわけではないことに気づかされます。ヒーラーであるあなたは、決して破壊者ではありません。この場合、あなたが治療しようとしている巨大な木は脅威ではなく、ただ傷ついているだけなのです。ステージのクライマックスでは、それまで旅してきた世界を眼下に見渡しながら、倒すためではなく、ただ傷を癒やすために巨木の登攀に挑みます。
プレビューいちの難関である木登りに挑むとき、ゲームと音楽が同調します。レベル全体を通して、歌が断片的にステージ音楽の中に漂うのを聞いてきたはずです。木を登るとき、その歌に再び命が吹き込まれ、歌の中の物語が繋ぎ合わされ、たどり着いた枝の数の分だけ、より多くの真相が聞こえてくるのです。これは、ゲームプレイ、ストーリー、音楽が一体となった瞬間であり、他に類を見ない素晴らしい体験といえるものです。

こうした体験は、『South of Midnight』というゲーム全体に渡って味わうことができます。今回は、たった 1 つのレベルで、Compulsion Games が本当にユニークなものを創り出したことがわかりました。ゲーム序盤でこれほど多くの新しい要素を感じられるのなら、この先も待ち構える数々の謎はさらに魅力的なものとなるでしょう。
※この記事は米国時間 2 月 11 日 に公開された “South of Midnight Hands-on: A Gorgeous, Pull-No-Punches Fairytale” を基にしています。