
『マインクラフト』は「Vibrant Visuals」によって、これまで頭の中で描いていたビジュアルへと昇華する
3 月 23 日に配信された「Minecraft Live」で、私たちは『マインクラフト』の未来を垣間見ることができました。今年後半に一部プラットフォームの『Minecraft: Bedrock Edition』で提供される「Vibrant Visuals」 (バイブラントビジュアル) は指向性のあるライティングやボリューメトリック フォグ (立体的な霧) など、さまざまなグラフィック要素が追加されます。これらはいずれもメニューからのシンプルな操作で自由に切り替えることができ、本作のビジュアルを大幅に向上させます。
Mojang Studios のチームは、Vibrant Visuals がこれまでプレイヤーの頭の中で描かれていた『マインクラフト』の姿を引き出すためにデザインされている、と表現しています。まったく新しいスタイルへの転換や、新しいビジュアルへの急激な変更でもありません。『マインクラフト』の象徴的な外観をさらに深く、豊かにさせるものなのです。


アート ディレクターのジャスパー ボルストラ (Jasper Boerstra) 氏は、このプロジェクトを主導する際に開発のきっかけとなったことについて、こう語ります。チームはまず、コミュニティが『マインクラフト』にどのように接しているかを確かめることから始めました。
「Vibrant Visuals は本作の配信者たちからインスピレーションを受けました。このプロジェクトについて考えていたとき、配信者らがシェーダーを使ってどのようにプレイしているのか、またそれに対してどのように反応しているかを調べるため、彼らのプレイ動画を視聴することにしました。そこで気づいたのは、プレイヤーは総じて建築などの特定の作業を行う際に、よりはっきりとブロックをチェックするためにシェーダーをオフにすることが多い、ということでした。これがきっかけで、オフにする必要のないグラフィック、つまり建築作業にも集中できるグラフィックについて考えるようになったのです。プレイヤーにとってシンプルでありながらインパクトのあるもの、それがまさに私たちが目指したものです」
筆者は幸運にもストックホルムの Mojang Studios を訪問し、Vibrant Visuals が実際に動作している様子を体験することができました。Vibrant Visuals の制作に費やされた膨大な作業の量を実際に体験するために制作された特別な 2 つのマップのうち、その 1 つに足を踏み入れた瞬間、このプロジェクトの根底にある哲学をはっきり理解することができました。Vibrant Visuals の真の魅力は、スクリーンショットやトレーラーで見るよりも、実際にゲームをプレイしてみることで初めて理解できるのです。


最初のマップでは、洞窟の中にスポーンしました。階段の上には夕焼け空が広がり、外から差し込む光が石壁の縁を照らし、そこに絡みつくツルがねじれた影を落としています。ホタルが飛び交い、周囲の水ブロックにはゆったりと踊る光が映し出されています。洞窟を出ると山岳地帯の砂漠が彼方まで現れ、低い太陽が風景に長い影を落とします。これは、これまでの『マインクラフト』では味わえなかった雰囲気です。
2 つ目のマップに切り替えると、一瞬で緑豊かな谷の真昼へと移動しました。桜の木々の隙間から陽光が差し込み、花びら (「Spring to Life」の一部として追加されたゲーム内ドロップ アイテム) が舞い落ち、周囲にひらひらと影を落とします。私は近くのプールに飛び込み、光が水中にも影響を与えていることに気づきました。水の中にも金色の光線が差し込んでいるのです。この変化は、ブロックのひとつひとつにまで及んでおり、光があらゆるものへどのように作用するのかがわかります。この場所に生息する野生動物の背中にも、その光が影響しているのです。


ボルストラ氏は、Vibrant Visuals が単なるグラフィックの改良ではなく、『マインクラフト』らしさを保ちつつもモダンな見た目を取り入れたものであることについて、詳しく説明してくれました。
「プレイすると、ゲーム内の影がピクセル調になっていることに気づくでしょう。すべての反射もピクセル化されています。アイテムを落として太陽の光が当たると、それもピクセル化されているのです。私たちは、『マインクラフト』らしさを大切したいと考えていました。Vibrant Visuals はおなじみの要素と新機能をうまく結びつける架け橋なのです。私たちはゲームの本質を忠実に守りながら、没入感を高める世界を作りたかったのです」
しかし、これらの新しいビジュアルの成功を示している最大の証拠は、プレイしているうちに筆者がすぐにそれらを気にしなくなったことかもしれません。Vibrant Visuals は、まったく新しい外観であることを常に思い知らされるような劇的な変化ではなく、『マインクラフト』のすべてを保持したまま、極めて丁寧に進化していると感じられるからです。実際、デモで最も驚いたのは、ホットキー 1 つで以前の外観と新しい外観を切り替えられるようになっていたことでした。そのことから、素晴らしい景色を次々と見つけては元の外観に戻し、どれほど変化したかを確認し続ける、という行動を筆者は繰り返し行っていました。


アップデート前のビジュアルでは、山々が巨大なブロックの塊のように私を取り囲んでいましたが、Vibrant Visuals ではボリューメトリック フォグによってそれらは霞の中に消えることで、マップに奥行きが生まれています。単に見た目が良くなっただけでなく、世界はより大きく広く感じられ、周囲に新たなスケール感と神秘性が加わっているのです
そして、これは Vibrant Visuals の始まりに過ぎません。Mojang Studios にとって本アップデートは一回限りの出来事ではなく、『マインクラフト』の特徴的な雰囲気を損なわずに、その外観を改善するための継続的な取り組みの始まりなのです。
「Vibrant Visuals はこれで終わりではなく、私たちの旅の始まりです」と、エグゼクティブ プロデューサーのインゲラ ガーネイ (Ingela Garneij) 氏は説明します。「私たちは今後も、視覚的なアップデートを実施し続けるために努力を続けていきたいと考えています。目標は、親しみやすいグラフィックで、さまざまなプラットフォームのプレイヤーにアプローチすることです。私たちは、コミュニティから愛され続ける『マインクラフト』のアート スタイルを大切にしながら、Vibrant Visuals の続きを送り出し続けます」


また、本アップデートはあくまでプレイヤーにとって 1 つの選択肢です。Vibrant Visuals は『Minecraft: Java Edition』向けにも計画されていますが、コミュニティが作成したビジュアル MOD や RTX 対応マップはそのまま利用できます。Vibrant Visuals はより高度な作業を必要とせずに、ゲームの外観を簡単にアップグレードできる新しい方法として提供されます。
こうしたアップデートの、プレイヤーにとってのメリットは明白です。長年のファンにとって、これは『マインクラフト』がコミュニティの想像力に合わせて進化していることを意味しています。また、新しいプレイヤーにとっては、ゲームの本質を失うことのない、モダンなビジュアルで本作が楽しめます。そしてすべてのプレイヤーにとって、Vibrant Visuals はアップデートをダウンロードするだけで楽しめるようにデザインされています。
私たちは、新しいブロック、新しいモンスター、新しいメカニクスなどのコンテンツを通じて『マインクラフト』の機能が拡張されることに慣れていることもあり、今回開発チームがまったく異なるアプローチを取ったことは非常に興味深いと言えるでしょう。そうした経緯もあり、Vibrant Visuals は、ゲームの外観の刷新だけにとどまらない、新しい夜明けのように感じられます。
Vibrant Visuals は、『Minecraft: Bedrock Edition』で今年後半から無料で利用できる予定です。
※この記事は米国時間 3 月 25 日 に公開された “https://news.xbox.com/en-us/2025/03/25/minecraft-vibrant-visuals/” を基にしています。