本日発売! 『プロミス・マスコットエージェンシー』のアクセシビリティ機能開発について聞く

ゲームを開発する際、開発者が検討しなければならない要素は数多くあります。例えば「ゲームの世界はどれくらいの大きさにすべきか」「マルチプレイをサポートすべきか」といった大規模で包括的なものから、「家のドアは何色にすべきか」といった、一見些細でも、決めないわけにはいかない要素まで多種多様です。

ゲームにおけるアクセシビリティ機能への需要は、ゲーム開発者の間で近年著しく高まっています。より多くの、さまざまなバックグラウンドをもつ人々が作品を遊べるように、こうした機能を積極的に取り入れる動きが進んでいます。色覚特性オプションやハイコントラストモード、ゲームの難易度調整など、その種類は多岐にわたります。

アクセシビリティ機能開発の経緯

今年の GDC (ゲーム開発者会議) で開催された ID@Xbox Showcase イベントで、Wire 編集部の記者である私は Kaizen Game Works のテクニカル ディレクター兼共同設立者であるフィリップ クラブツリー (Philip Crabtree) 氏と話す機会がありました。

彼は展示ブースで、 Xbox アダプティブ コントローラーと、新しく発売された Xbox アダプティブ ジョイスティックを使って『プロミス・マスコットエージェンシー』のデモをしていました。私はすぐに興味を惹かれ、チームがどのような経緯でアクセシビリティに対し開発リソースを割くことを決めたのか、そしてなぜそれが彼らにとって重要なのか聞いてみたくなりました。

「なにか決断するというより、ただやりたかったんです。そして、それはほとんどチーム内で暗黙の了解でした。アクセシビリティ機能のアイデアが出るたびに、それについていちいちミーティングをすることもありません。ただ、”これを入れるよ” と報告するだけでよかったんです」とクラブツリー氏は答えました。「デモをプレイした人からの提案や、私たちが他のゲームで見たもので、”取り入れるべきだ” と判断すれば、できる限り実装しました。その判断は、ごく自然な流れでした。」

『プロミス・マスコットエージェンシー』では、あなたはヤクザ界から追放された元若頭の「ミチ」として、呪われた地といわれる「カソ町」に身を隠すことになります。そこで、ひょんなことから倒産寸前のゆるキャラ派遣事務所を引き受けることになり、新生活に戸惑いながらも、事務所を再建していきます。そして、ミチの追放の裏に隠された陰謀があったことが、しだいに明らかになるのです……。クラブツリー氏は、本作を犯罪ドラマとミニゲーム、カーバトルを組み合わせたオープンワールドのストーリー アドベンチャー ゲームだといいます。

前作の評判を経て、さらに力を入れたアクセシビリティ

クラブツリー氏が開発した『パラダイスキラー』にはアクセシビリティの設定がいくつかあり、Kaizen Game Works のファンコミュニティから好評を博していましたが、テキストダイアログのスタイルを変更できないなど、いくつかの制限も指摘されました。そのため、『プロミス・マスコットエージェンシー』では、アクセシビリティ機能をさらに改善したいという思いがあり、開発の初期段階から優先したそうです。

「『プロミス・マスコットエージェンシー』では、プレイヤーがトラックで走り回るので、トリガーを長押し状態にしなくても運転可能にしたいと思いました。そこで、タップで運転、タップでバックするモードを実装しました。ブーストも同じで、タップするとあれこれできます。また、画面上の目標ガイドの見やすさを考え、ハイコントラストモードの導入を検討しました」と、クラブツリー氏はアクセシビリティ機能の開発について教えてくれました。「制限時間のような、難易度を上げる要素の場合は、調整可能にしたり、テキストを読む時間を増やしたりできるようにしました。小さなチームでも実装できる部分は、すべて盛り込んだつもりです。」

取り入れたいアクセシビリティ機能は「すべて

私はクラブツリー氏に、『プロミス・マスコットエージェンシー』で特に重要だと考えていたアクセシビリティ機能があるかどうか、またイベント会場で参加者が実際に試用していた Xbox アダプティブ コントローラーへの対応について尋ねました。すると、「取り入れたいアクセシビリティ機能は “すべて” です」という答えが返ってきました。

「ゲーム全体が (Xbox アダプティブ コントローラーで) うまく動くことを目指しました。ゲームの 10 パーセントにしかアクセスできないのでは意味がありません。ですので、Xbox アダプティブ コントローラーが目の前にあれば、あとは正しい操作方法を理解するだけで動かせるような状態を目指し、実現したのです。」

「さっきも言ったように、加速するときはボタンを押し続けるのではなく、タップするだけでトラックが前進します。ブレーキをかけるときは、同じボタンをタップするか違うボタンをタップするか、どの方法が自分に合うのか、オプションで設定することができますし、それを何とか実現することができました。」

Xbox アダプティブ ジョイスティックの導入

開発チームは、最近発売したデバイスの Xbox アダプティブ ジョイスティックも使えるようにしました。「Xbox アダプティブ ジョイスティックは素晴らしいですね。最近までその存在を知らなかったのですが、持っているだけで幸せです。本当に素晴らしいデバイスです」とクラブツリー氏は熱弁します。

「Xbox アダプティブ コントローラーだけだった時は、別途アナログスティックも必要であると、不足を感じてしまいました。少なくとも過去に私たちが作ったゲームを、アナログ スティックなしで成立させるのは難しかったのです。」

クラブツリー氏は、Xbox アダプティブ ジョイスティックの魅力についてこう続けました。「そのため、コントローラーのすべてのボタンとは言わないまでも、多くのボタンが必要でした。それが、この新しいジョイスティックが出る前に直面していた問題でした。しかし、(従来のスティック操作が難しい人のために設計された) Xbox アダプティブ ジョイスティックは、ボタンを自分の好きなように割り当てることが可能で、とてもフレキシブルです。操作方法をすぐに理解できました。」

「カイゼン」の糸口を探してみることからはじめよう

Kaizen Game Works のクラブツリー氏が強調するように、アクセシビリティへの取り組みは、まずどこに「カイゼン」の可能性があるかを探し出すことが大切です。開発者が完璧に仕上げて、それを誰かが気に入るか気に入らないかを深く考える必要はありません。「プレイヤーに選択肢を与え、彼らが何を望んでいるのかを見極めることです。それは簡単なことです。ゲームを作る開発者は誰でも、みんなにプレイしてもらいたいし、みんなに楽しんでもらいたいのです。アダプティブ コントローラーなどのような製品があれば、より多くの人がゲームを遊べます。以前は手が届かなかったかもしれないゲームを見つけてもらい、そのゲームをプレイしてもらえることは、とてもいいことだと思います。」

とにかくやってみること――プレイヤーがあなたの作品を待っています

ゲームをアクセシブルにする方法を検討し始めたばかりの開発者のために、クラブツリー氏はその取り組み方について、とてもシンプルなアドバイスをくれました。「とにかくやってみることです。」

「深く考えすぎないでください。自分のゲームを見て、アクセシビリティとは何か考えればいいのです。動作だけでなく、ゲーム内の時間制限のような設定についても再考してみてください。時間制限はストレスや認知的にプレイのハードルを上げる可能性があります。それを調整可能にすれば、プレイヤーが自分のペースで理解し、ゲームを進めるための選択肢を増やせます。ぜひ色々な方法を試してみてください。」

「どうすればもっとアクセシブルになるか、ゲーム中、プレイヤーが行うすべての行動について考えてみてください。ただ、必ずしもすべての問題に対応しようと、気負うことはありません。それができれば素晴らしいですが、少しずつの改善でも意味はあります。そして、一度実装してみれば、その知識を活かして次の機能実装にもつながります。次回作では、さらにアクセシビリティを高められるはずです。なので、とにかくやってみてください。人々はあなたのゲームをプレイしたいと待っています。彼らがプレイできるよう、手助けをしてあげてください。」

プロミス・マスコットエージェンシー』は Xbox Series X|S ほか各ゲーム プラットフォームにて本日より好評発売中です。

※この記事は米国時間 3 月 20 日 に公開された“How Promise Mascot Agency is Being Built with Accessibility in Mind”を基にしています。