『Kiln』の元となったプロトタイプが本格的なゲームになるまでの道のり

概要

  • Double Fine の最新作が、アイデアの芽生えから「陶芸パーティー格闘ゲーム」になるまでの経緯をご紹介
  • 試行錯誤と実験、さらには実際の陶芸教室への参加を通じて、Double Fine はこれまでで最も創造的かつ技術的に野心的な挑戦のひとつを実現
  • 『Kiln』は 2026 年春に発売予定。Xbox Series X|S、Xbox on PC、Xbox Cloud Gaming、Xbox Play Anywhere、PlayStation 5、Steam、ハンドヘルドに最適化され、Xbox Game Pass Ultimate にも対応

私はいつも、ゲーム開発におけるひらめきの瞬間こそが、最も興味深いストーリーを生むと感じています。そのインスピレーションはさまざまな形で、しかも思いもよらないタイミングで訪れるものです。公園を散歩しているときかもしれないし、スーパーの真ん中でふと思いつくこともある。そして『Kiln』の場合、それはインターネットで粘土の壺を見ていたときに起きました。

「オンラインで別のことを調べていたとき、壺の写真をいくつか見つけてから、粘土の成形のアイデアが頭の片隅にずっとあったんです」と、プロジェクト リードのデレク ブランド氏は語ります。「壺にはすごく多様な形があることにすぐ気づきました。そして、それは 2D 的な表現なので、コントローラーでも作れるんじゃないかと思ったんです。そこから一気にいろいろなことがつながっていって、次の「Amnesia Fortnight」用の企画を思いつきました。本当に締め切り直前にまとまった感じでした」

「Amnesia Fortnight」は、Double Fine が社内で年に 2 回開催しているゲーム ジャム イベントです。スタジオのメンバーは 2 週間という限られた期間の中で、アイデアの種をプレイ可能なゲームへと形にします。このイベントでブランド氏は、『Kiln』の初期アイデアを提案しました。

「当時はアクション ゲームをたくさん遊んでいて、自分の小さな粘土キャラクターを、誰かの小さな粘土キャラクターと戦わせたいと思ったんです。楽しそうだと思ったんですが、コントローラーでどう実現するかはまだ分かりませんでした」

ブランド氏が語ってくれた面白いエピソードの一つは、開発が本格化した際、Double Fine のチームが実際に陶芸教室に通い始めたことです。陶器作りに関わるさまざまな要素を理解するためでした。そしてそこで、アイデアが一気に広がりを見せ始めます。

「陶芸には本当にたくさんの技法や工程があって、ゲームに取り入れられる素材が山ほどあるんです。『キャラクターを彫刻できる』と分かった時点で、粘土でできることはそれだけじゃないと気づきました。そこからアイデアがどんどん積み重なっていったんです。例えば基本の形について長く話し合ったあと、『釉薬をかけたい』という話になりました。実際の陶芸では金属のトングで壺をつかみ、釉薬の入ったバケツに浸すんです。そういった現実の陶芸の工程をゲームに取り込み、プレイヤーにも体験してもらおうとしました」

そこからさらに、プレイヤーが壺をカスタマイズするアイデアも増えていきました。取っ手やフタ、注ぎ口を付けたり、さらに遊び心としてステッカーを貼ったりと、基本の粘土壺を自分だけのものにする方法は無数にあります。

「すべてはリサーチとチーム メンバーのアイデアから始まりました。それらを大量に集めて、そこから削ぎ落としていき、最終的に一貫性があり、よく設計されたものにしていったんです」とブランド氏は語ります。

しかし、陶芸のような難しい趣味をどうやって対戦型マルチプレイヤー ゲームに落とし込むのか。その答えはできるだけ分かりやすくすることでした。

「『Amnesia Fortnight』のプロトタイプの後、最初のアイデアの一つはろくろでキャラクターを作る、というものでした。でも今思うと、あれは少し単純すぎる考えでした。大学で陶芸を少し学んだことはあったんですが、コントローラーでキャラクター作成を実現する方法として考えていただけだったんです」

コントローラーを使うと、粘土が仮想のろくろの上で回転する中、プレイヤーは小さな精霊の手を上下に動かして形を整えられます。さらに、複数の成形ツールを使うことで、壺により細かなディテールを加えることもできます。

筆者自身、ゲームを少し触ってみたが、すぐにコツをつかめました。粘土成形ツールを数分触るだけで、とても自然に操作できるのです。このことから、プレイヤーも触れてみてすぐこの創造的な要素を簡単に楽しめるだろうという印象を受けました。

ブランド氏に「陶芸初心者へのアドバイスは?」と尋ねると、答えはシンプルでした。「怖がらないこと。完璧にしようとしすぎないことです。いろいろ試して、自分の好きなものを見つけてください。形や試せることにほとんど制限はありません。とにかくツールをいろいろ試してみてください。直線が好きならそのためのツールがありますし、曲線やうねった形が好きなら、直感や心のままに作ればいいんです。」

この開発期間中に生まれたもう一つの改善アイデアは、プレイヤー視点の調整でした。

「チームには『壺こそがゲームの主役』というモットーがあります。カメラを引いてレンズを長くすると、みんなが作った奇妙で面白い作品が一緒に見えるようになり、戦場でのチームの姿も分かりやすくなりました。その方が、プレイヤーの作品を見せる方法として良いと感じたんです。

実際に数ラウンド遊んでみると、ブランド氏の言うことはよく分かります。『Kiln』の魅力は、気軽に遊べる点だけでなく、全員の創造力がゲーム内で可視化されることにあるのです。自分のチームも相手チームも、さまざまな作品が並びます。また、キャラクターの上からマップ上の通路が見えるため、戦場を移動する際にも役立ちます。

スクリーン ショットやゲームプレイを見れば分かるように、『Kiln』を他のパーティー格闘ゲームと差別化している最大の要素は壺作りです。ここまで深いキャラクターカスタマイズを持ち込めるマルチプレイヤーゲームはほとんどないでしょう。釉薬、形、ステッカーなどを組み合わせることで、ゲーム内で出会う壺のバリエーションはほぼ無限になります。それによって『Kiln』には独自の個人的な魅力が生まれています。プレイヤーはリアル タイムでゲーム世界の一部を作り上げている感覚を得られるからです。

『Kiln』では、プレイ可能な精霊たちが互いに粘土の身体を作り、発見していくことも重要な要素です。ただし、必ずしも戦う必要はありません。ブランド氏によれば、壺作りだけを楽しむこともできるようです。

「ロビーで椅子に座って、ひたすら壺作りに集中することもできます。ろくろで粘土を捏ねる回数に制限はありません。いろんな組み合わせを試して実験できます。私たちは『創造と破壊』の両方に関わってほしいと思っています。壊れても大丈夫。また新しく作ればいいんです」

ゲームのソーシャル ロビーである「The Wedge」では、自分の壺から飛び出して、他の人の作品に入ることもできます。また、誰かがあなたの作品を使うこともあります。

「壺には必ず制作者の名前が保存されます」とブランド氏は説明します。「つまり、その壺は旅をします。別のサーバーに行くこともあります。ロビーには台座が並んでいて、そこにはあなたのお気に入りの壺が展示されます。誰でも試して入ることができるんです。気に入った壺を見つけたら、自分のコレクションに保存することもできます」

ここでも、Double Fine のモットーに戻ります。壺こそがゲームの主役なのです。プレイヤー自身は、『Kiln』での旅路を形作ることになります。

「みんなが陶芸に興味を持ってくれるといいですね」とブランド氏は思いを馳せます。「陶芸はあまり注目されていない芸術形式だと思うんです。でも本当にすごい技術で、とても古くて素晴らしいアートです。この魅力的な活動を活かしたゲームはほとんどありません」

そして、2026 年春に『Kiln』が Game Pass で発売初日から配信されることで、興味を持ったプレイヤーの皆さんはすぐに本作を体験できます。「Game Pass の一番好きなところは、広がりの性質を持つ点です。ちょっと変わった陶芸ゲームに興味を持った人なら、すぐにダウンロードして壺を作り、そして互いに壊し合うことができます。こんなに多くの人に手軽に遊んでもらえるのが本当に楽しみです」とブランド氏。

Kiln』は 2026 年春に発売予定で、Xbox Series X|S、Xbox on PC、Xbox Cloud Gaming、Xbox Play Anywhere、PlayStation 5、Steam、ハンドヘルドに最適化され、Xbox Game Pass Ultimate にも対応します。

※ この記事は米国日時 2 月 26 日に公開された “How Kiln’s Two-Week Prototype Became a Full-Fledged Journey” を基にしています。

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