フロム・ソフトウェアの宮崎英高氏が語る『ELDEN RING』開発の秘密

3 月に発売されたフロム・ソフトウェアの『ELDEN RING』は、ゲーム界に旋風を巻き起こしました。フロムの旧作ファンはもちろん、新しいユーザーも取り込み、これまでで最も洗練されて親しみやすいゲーム体験を提供しています。フロム作品としては初となるオープンワールドは美しく広大で、さまざまな探索を楽しめるようになっているのも特徴です。本作は発売直後から大ヒットを記録し、何百万人ものプレイヤーがエルデの玉座を目指しました。

今回は、フロム・ソフトウェアのディレクターとして『DARK SOULS』や『SEKIRO SHADOWS DIE TWICE』、『ELDEN RING』といった傑作タイトルを世界中のファンに届けてきた、宮崎英高氏にお話を伺う機会をいただくことができました。『ELDEN RING』がどのようにデザインされたのか、どのボスがお気に入りなのか、そして悪夢のようなユビムシへの対処法について教えていただきます。


オープンワールドのデザインは、これまでの作品と創作のプロセスにおいてどのような違いがあったでしょうか。


宮崎氏:

ゲーム全体のデザインで言えば、『DARK SOULS』などから変わらぬテーマである達成感に加え、

未知と脅威に満ちた広大な世界に、自由に挑む「冒険感」を重視したことが大きかったと思います。

また制作の実際で言えば、本作はこれまでよりも遥かに大きなゲームになりましたので、

私以外のスタッフに任せる部分が大きくなったことも挙げられますね。

言い換えれば、そうした、任せられるスタッフが育ってきたことが、

このタイミングで本作を作ろうと決断した理由です。


戦灰のシステムを実装した背景にはどのような考えがあったのでしょうか。より柔軟性を提供することにあったのでしょうか。


宮崎氏:

そうですね。

本作は様々な面で自由度を重視しており、戦灰もその一環です。

武器を強化し、自分なりにカスタマイズするという文脈で、より自由度を増そうと考えたもので、

武器のカスタマイズ感が大きく増し、楽しいものになったかと思っています。

 

また、戦技自体についても、

『DARK SOULS 3』の時の、武器カテゴリの個性を増すための戦技、といったものから、

ハイファンタジーあるいは神話の世界で戦うための力、といったニュアンスを強めており、

結果として、派手だったり、個性的だったりするものが増えていますね。


どのようにいろいろな種類の召喚用霊体をデザインしたのでしょうか。


宮崎氏:

召喚される霊体は、基本的に敵から選ばれていますが、その基本はゲーム性ですね。

できるだけ、その霊体ならではの個性、ゲーム性があるように意識して選定し、デザインしています。

その上で、すべての霊体ということではありませんが、

ロールプレイの観点からも個性を加えている感じです。

私としては、むしろ後者の側面を気に入っているので、

そうした意味でも、ユーザーさんにも楽しんで貰えると嬉しいです。


オープンワールドの特定のエリアにどのボスを置くかという点で、デザイン上の判断はあったのでしょうか?


宮崎氏:

マップのデザインを始める段階で、特に主要なものについては、

そのマップにどのボスが登場するのか、ということは設定的に決まっています。

ですから、ボスのゲーム性を前提に、マップはデザインされていますし、

ボスのゲーム性は、登場マップを前提に調整されます。


『ELDEN RING』で個人的に好きなボスは誰ですか?


宮崎氏:

とても迷うところですが、ラダーンですね。

一人のキャラクターとしても魅力的ですし、ラダーン祭りというシチュエーションも気に入っています。

文字通りのお祭り感、高揚感と共に、我々らしい寂しい切なさもあるのかなと。

最初「ラダーン祭り」というアイデアを話したとき、

チームの誰も本気にしてくれなかった頃が懐かしいです(笑)

次点で挙げるとすれば、ゴドリックとライカードですね。


また、他オープンワールドゲームにインスパイアされた点はありますか?


宮崎氏:

特定のゲームに特にインスパイアされた、ということはありませんが、

ユーザーとしても、名作と呼ばれるオープンワールドゲームを多くプレイし、

それぞれから素晴らしい刺激を受けました。

タイトル名を挙げるときりがないのですが、

『The Elder Scrolls』シリーズや『ウィッチャー3』などがそうですし、

特に近年では『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が挙げられると思います。


敵スパイダーハンド(ユビムシ)を見ないで済む方法はないでしょうか。目を閉じてもその姿が浮かんでくるようです…


宮崎氏:

何と言いますか…、とてもすみません…

実はユビムシも、お気に入りデザインのひとつです…

見ないようにしよう、と意識することが、むしろ悪影響であり、

しっかりと見据え、打ち倒すことで克服できたりしないでしょうか…?


『ELDEN RING』は大ヒットしていますが、これまでと心境の変化はありますか?


宮崎氏:

本作が、非常に多くのユーザーさんにプレイして頂けていることは、

制作者の一人として、とても嬉しく、またとても驚いています。

 

自分や、我々フロム・ソフトウェアが、

ゲーム制作者として非常に幸運であることは、これまでも感じてきましたが、

今回、その思いを改めて強く感じているところです。

 

ただ、心境というか、ゲーム制作に臨む姿勢に大きな変化はありません。

 

我々は、これまでも自分たちが面白いと信じるゲームを作ってきましたし、

これからも、変わらずそうしていくでしょう。

 

そうやって、また新しい、面白いゲームを作っていくことが、

今回の喜びと感謝を、ユーザーさんに伝える一番の方法であると信じています。