『Hotel Barcelona』SWERY 氏インタビュー。須田剛一氏と共に開発中のゲームは、新たなデスループ システムを搭載したホラー アクションだった!

東京ゲームショウ 2023 で配信された Xbox Digital Broadcast にて、株式会社 White Owls の SWERY (末弘秀孝) 氏と株式会社グラスホッパー・マニファクチュアの SUDA 51 (須田剛一) 氏が一緒に開発を進めている『Hotel Barcelona』の詳細が発表されました。

じつはこのゲーム、今を遡ること 4 年前にイベントでタイトルとジャンルが告知されており、世界中に熱心なファンがたくさんいる人気ゲーム クリエイターのふたりが一緒にゲームを作るということで、大注目となった作品です。個人的な妄想としては、二重人格風の捜査官がビーム・カタナを振り回したりするのかも? なんて考えたりと、その期待は膨らむばかりでした。

ただ、イベントでの発表だったため、期待を膨らませて当時は聞いていた印象も拭えなかったのも事実。1 年、2 年と月日が流れてもとくに発表もないままだったので、「あのゲームは本当に作られているのだろうか」と、ちょっと諦めかけた気持ちでもいました。

そんな『Hotel Barcelona』がじつはちゃんと作られていて、しかも Xbox Digital Broadcast でゲーム映像まで公開されたとなれば、これは具体的に話を聞かなくてはなりません。早速 SWERY 氏にコンタクトを取り、本作について質問をぶつけてみました。

全米のシリアル キラーを倒すホラー アクション!

SWERY 氏

──『Hotel Barcelona』の企画はどのような経緯でスタートしたのでしょうか?

SWERY氏: 2019 年 10 月に東京の渋谷で開催されたトラヴィス・マンデー・ナイトロ2 という須田さんがホストのトーク イベントで、僕がゲストで出演したのがキッカケです。そのイベントでこんなゲームを一緒に作りましょうという話になりました。このとき、『Hotel Barcelona』というタイトルも発表しているんですよ。ただ、その場のノリで「コラボしましょう!」という話はしたものの、本当にやるかどうかははっきりしない状態でした。

でも、そのすぐあとの 2019 年 10 月末にカナダで行われたイベントで須田さんと一緒になったんです。そこで改めて、須田さんから「あの話、真面目に進めたいと思っているんですけど」となり、カナダでディナーを一緒にしながら一気に企画を詰めました。

──その段階でゲームの骨格はできたのでしょうか。

SWERY: ホラーで横スクロール アクションでタイトルは『Hotel Barcelona』、というのはイベントで発表してしまったので (笑)、そこを軸にしつつ、アイディアを出し合いました。そうしてまとまったのが、ホラー映画のパロディのような雰囲気にしつつ全米のシリアル キラーを倒していく、という痛快なものになっていったんです。その舞台となるのが、Hotel Barcelona。大枠の骨格はこのとき決まって、あとは須田さんとやりとりしながら、僕のほうで企画書にまとめあげました。

ホラー映画のサブ ジャンルをモチーフにしたボス

──PV を観るかぎり、武器も豊富のようですが……。

SWERY: 大型の手術ナイフのような近接武器がメインウェポンで、ショットガンや火炎瓶などの遠距離武器がサブウェポンです。これらをそれぞれ装備してミッションに出向きます。武器の入手方法は、基本的にミッション中にドロップされる宝箱からですね。見た目の種類とか性能差はもちろんあります。

舞台となる Hotel Barcelona は、総合レジャー施設のような場所で、ホテルを中心にカジノがあったりキャンプ場があったりするようなところです。それぞれ周囲の施設が 1 つのワールド を構成しています。

私と須田さんが作っているせいもあって、それらのワールドはちょっとひねくれた仕掛けがあって、それぞれにシリアル キラーのボスが登場します。この 7 つのワールドを何とかクリアしていくのが [ゲームの] 目的となっていますね。

──ボス キャラは映画のキャラクターからヒントを?

SWERY: 特定の映画をオマージュしているわけではないんです。ホラー映画のサブジャンルを具現化したようなものなんですよ。たとえばスラッシャームービーとか、ゾンビ ホラーとか、あるいはサマー キャンプ物とかべビーシッター物とか……、ホラーのサブジャンルには、いろんなものがあるんです。そうしたサブジャンルから「あるある」のキャラクターを発想して、作り上げていきました。

たとえばジャパニーズ ホラーもサブジャンルだと思いますが、特定のジャパニーズ ホラーの表現へのオマージュに偏っているのではなく、「ジャパニーズ ホラーあるある」がキャラクターに結びついているような作り方をしています。

新たなるループ システム「スラッシャーファントム」

──本作最大の特徴である、スラッシャーファントムについて教えてください。

SWERY: これは、今後アクション ゲームを作るときのために僕が個人的に考えていたアイディアのひとつで、このゲームにマッチするんじゃないかと思って組み込みました。

簡単に言うと、前回やられたときの自分 (プレイヤーキャラ) が攻撃判定を持ったまま、その動きをそのまま再現して動いてくれる、というものです。レース ゲームのゴースト機能のようなものですが、攻撃判定があるので、過去の自分と一緒に戦うような仕組みですね。最大 3 回分までの過去の自分を出すことができるので、週回を重ねればどんどん強くなっていきます。

だったら「ずっとスラッシャーファントムを 3 体引き連れていれば強いじゃないか!?」となりますが、そう簡単にはいきません。

ひとつのワールドはいくつかのエリアをクリアしていき、最後のエリアでボスが登場する、という仕組みになっているんですが、エリアをクリアしたときにパワーアップを選択できるんです。体力回復したり攻撃力をアップしたりできて、どのルートを選んでボスまで行くか、という戦略も大切になっていきます。ただ、やられてエリアの最初に戻されたとき、「やっぱり攻撃力を高めよう」と前回と違うルートを選んでしまうと、スラッシャーファントムは一度リセットされてしまうんです。

慣れてくればだんだんとスラッシャーファントムなしでボスに勝てるようになります。気が付いたらゲームそのものがうまくなっていた、となっていることを目指して調整しています。

──このスラッシャーファントムのアイディアは、どういうところから生まれた発想なのでしょうか!?

SWERY: やられたらイチからやり直しとなるデスループ系のゲームがいろいろある中で、ループすること自体をうまく組み込んだアクション ゲームを作りたいな、とずっと思っていました。次のループに持ち越せるものは、アイテムや経験値ではなくて、やはりアクションそのものでないといけないだろう、というのが僕の考えなんです。そこで、過去の自分のプレイそのものをアクションとしてループさせるというものを考えました。

テスト プレイを見ていると、アクション ゲームが苦手な人ほど、スラッシャーファントムを大切にしていますね。体力回復とこれとどっちを取るか、という場面ですごく悩まれている印象です。

『The MISSING – J.J.マクフィールドと追憶島』を作ったチームで開発を進めているのですが、開発の開始時には彼らには横スクロールのバトル アクション ゲームだということだけ伝えて、スラッシャーファントムのシステムについては何も話しませんでした。横スクロールするゲームの開発経験はあったのですが、バトル アクションの経験はなかったので、まずはしっかりと気持ちの良い手触りの部分を仕上げることを目指したんです。それで、ある程度出来上がってきたところで、「じつはこういうシステムを入れたいと思っている!」と開発チームに伝えました。

SWERY × 須田のアート スタイルを模索

──ビジュアルがとても個性的だと感じました。アート スタイルにはどのようなこだわりがあったのでしょうか。

SWERY: SWERY ゲーなのか須田ゲーなのかでアート スタイルは変わるよね、という話から、どっちの良さも取り入れないといけない、という難題からスタートしました。まず我々ふたりの特徴として、アニメイテッドな表現という部分があるので、最初は『D4: Dark Dreams Don’t Die』のスタイルに抽象化の表現を取り入れたシェーダーを乗せてみました。だた、こうするとキャラクターが小さいせいかあまりうまく表現できていなくて、だったらとレイトレーシングと取り入れて入れてギラギラなエフェクトを入れたら、今度はフレームレートが犠牲になってしまって……。そこで、最終的にはジャパニーズ アニメの色味や塗りの雰囲気と、80 年代ハリウッド ホラーの陰影表現をミックスした形に落ち着いたんです。アクション ゲームなので 60fps は死守しつつ、アート スタイルも今までにないものを目指して開発しなければと。

──ボス戦に入るときのアニメーションがとても気になります。

SWERY: あれは、アニメーション作家の南條沙歩さん (最近、勢いのあるアニメやアーティストの MV を制作) にお願いしました。各ボスの登場時にかっこいいアニメが流れますので、そこもぜひ注目してください。

やり応えのあるアクション ゲームを 2024 年中に!

──2024 年発売予定ということですが、イメージとしてはだいたいいつごろでしょうか?

SWERY: ゲームの骨格はできあがっていますし、コンテンツ量もかなりできあがっている状態です。なので 2024 年は間違いないのですが、ただゲーム作りはここからが本番なので……。[アクション ゲームといえば、]やはり調整にすべてがかかっているので、それにどれくらいかかるか次第です。

──最後に、本作を楽しみにしているユーザーにひと言お願いします。

SWERY: まずは『Hotel Barcelona』に興味を持っていただいてありがとうございます。今回は僕と須田さん、2 人のクリエーターがコラボレーションした作品なので、もしかしたらイロモノに見えるかもしれないんですけど、ちゃんとしたやり応えのあるアクション ゲームを作っています。『The MISSING』を作ったスタッフと中心に、White Owls の完全新作ゲームとして開発しており、自信を持ってお届けしますので、楽しみにお待ちください。