概要
- 新作リメイクの開発に際して下された慎重な決断とは。プロデューサーの早坂将昭氏から説明を聞きます。
- 史上最高の、そして最も影響力のある RPG タイトルの 1 つが、さらなる進化を遂げました。
- この新作では、オリジナル版の良さはそのままに、まもの使いなどの新しい職業、「モンスター・バトルロード」、オート バトルなどなど、新たな要素が追加されています。
ゲームのリメイク版を開発するのは大変なことですが、本作のようなタイトルであれば、なおのこと骨の折れる作業であったと思います。
多くのファンから愛されている名作『ドラゴンクエストIII』は、単なる RPG ではなく、唯一無二の RPG なのです。批評家やゲーム ユーザーに愛されているだけではなく、『ドラゴンクエストIII』には多大の影響力があります。もし、あなたが JRPG をプレイしたことがあるなら、そのタイトルも、この歴史的名作から恩恵を受けているのではないでしょうか。
そのため、『ドラゴンクエストIII』を HD-2D リメイク版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』として現代のユーザーに届けることは、慎重な対応を要する作業であるとともに、高ぶる気持ちもあったと思います。プロデューサーの早坂将昭氏をはじめとする開発チームにとっては、ひたすら楽しく遊べるゲームとするだけでなく、目新しく現代的なゲーム感を与えるための機能を追加する機会ともなったのではないでしょうか。
そして、なんといっても真っ先に気づくであろう点がビジュアル面です。『オクトパストラベラー』などで周知されるようになった HD-2D のスタイルでゲーム全体が再構築されています。さらに、まもの使いなどの新職業、「モンスター・バトルロード」といった、新たな要素も追加されています。プレイ快適化のための要素も多数実装されており、楽しくプレイしていただけます。
つまり、本作は素晴らしいゲームの素晴らしいリメイク版なのです。しかし、このユーザーに愛され続けている名作、『ドラゴンクエストIII』のリメイク版は、どのようにして開発されたのでしょうか。このような名作を、Xbox のような現代のコンソールでプレイできるようにするため、チームはどのような取り組みを進めてきたのでしょうか。
Q.『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』をリメイクすることになった背景についてお聞かせください。また、なぜこのタイミングでリメイクをすることになったのか、その理由もお聞かせください。
早坂将昭氏 (HD-2D リメイク版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』のプロデューサー) :『ドラゴンクエストIII』はさまざまなプラットフォームに移植されてはいますが、1996 年の SFC 版、2000 年の GB カラー版以降、20 年以上リメイクされていませんでした。
そんななか、『オクトパストラベラー』によって HD-2D というグラフィック表現が誕生し、『ドラゴンクエストIII』にこれ以上なく相応しいリメイク手法になることが確信できたため、満を持してこの HD-2D を使ったリメイクの話が浮上した、という経緯です。
Q. HD-2D のビジュアルスタイルでリメイクすることにした理由をお聞かせください。
HD-2D は、それを使うタイトルがレトロであればあるほどに真価を発揮します。
また、HD-2D は日本以上に海外でとても評価が高く、そのパワーを使って、海外でより「ドラゴンクエスト」を広げていきたい、という想いもあって採用されました。
Q. HD-2D のグラフィックスにより、ゲームがどのように向上したのかお聞かせください。
当時は限られた容量の中で制作がされていたので、マップもキャラクターも、グラフィックで表現できることに限界がありました。
ただ今回は時代が進んで、且つ HD-2D という手法を取り入れたことで、当時のユーザーが頭の中で思い描いていた景色、キャラの動きというのが具現化できたことで、より冒険に没入できるようになったのではないでしょうか
Q. これまでのDQIIIの世界を新しいビジュアルスタイルに変更していく中で直面した困難には、どのようなものがありましたか。
一番苦労したのは、マップの縮尺をどれぐらいにするか、という点です。
原作と同じぐらいの狭さで 3D マップを作ると、密度感は出ますがゲーム的にはとてもボリュームが小さく見えてしまいます。一方で広くしすぎると、今度は原作にあったテンポ感の良さが失われ、間延びした感じが出てしまいます。
これについては社内でのテストプレイ会を徹底的に実施し、多くの関係者から出た意見を参考に調整することで、現在の最適なサイズに整えていきました。
Q. このリメイク版で、『DQIII』の魅力的なスタイルを確実に表現するために、どのような工夫をされましたか。
「可能な限り原作から変えない」というコンセプトを立てたことですね。この『DQIII』は当時日本で社会現象を起こしたタイトルであり、いま現在でもそのシステムやストーリーが高く評価されています。
つまり原作の時点で十分に魅力的であり、それをなるべくそのまま楽しんでもらいたいと考えたのです。
Q. リメイク版では、バトル速度やオートバトルなどでプレイ体験を向上させる機能が施されています。これらの新機能を本作に導入された理由をお聞かせください。
先ほど「可能な限り原作から変えない」と書きましたが、それと同時に「遊びにくいところや分かりにくいところは徹底的に調整して、現代のゲームとしてふさわしい形にする」というコンセプトも初期から立てていました。
名作とはいえ何十年も前のゲームなので、いま改めてみると遊びにくい箇所は多々ありましたから。
バトル速度やオート セーブ、オート バトルなどはそういった「現代のゲームにするために」という観点で入れたものですね。
Q. 新職業の「まもの使い」を追加するという着想は、どのようにして生まれたのかお聞かせください。
まず本作は原作よりも町やフィールドのマップが広くなっており、世界の隅々まで冒険してもらうために新しい遊びを追加する必要がありました。
次にモンスター・バトルロードという新規要素を入れることになり、それら繋ぎ合わせる要素があれば、一括りにして本作の新しい目玉として打ち出せるのではないかと考え、まもの使いが生まれました。
つまり、
- 広くなったフィールドやタウンで、はぐれモンスターを保護する。
- そのモンスターを「バトルロード」で戦わせる。
- 戦わせるモンスターが保護しやすい、という特長も持つ新職業として、まもの使いはどうか。
という経緯で生まれた形ですね。
Q. この新職業を追加実装し、他の職業との強さのバランスを取ることは、どの程度困難な作業だったのでしょうか。
どれぐらいの強さのバランスにするかは少し悩みましたが、堀井さん (『ドラゴンクエスト』シリーズの生みの親) とお話して「せっかくの新職業なのに弱かったらお客さんがガッカリしちゃうから、ちゃんと強くしてあげよう!」というアドバイスをいただいて方針が決まりました。
Q. 今回のリメイク版の新要素として、「モンスター・バトルロード」を追加しようと思われたきっかけについてお聞かせください。
原作のモンスター闘技場はオッズの仕様が入っていた関係で、現代でそれを入れてしまうとギャンブル要素として海外で販売する際にレーティングが上がってしまう問題がありました。
今回は年齢層を問わず幅広い人に遊んでほしかったので、その闘技場をリニューアルする形で「バトルロード」にしました。
Q. オリジナル版の本質を維持しつつ、新機能を追加するのに、どれほどの困難がともないましたか。
他の質問でも書いた通り「原作を可能な限り変えない」という方針と「遊びにくいところを徹底的に改善し、現代のゲームに仕上げる」を共存させて取り組んだところですね。
それでもあまり変えすぎると「こんなの『DQIII』じゃない」と言われてしまうでしょうし、かといって変えなければ「古すぎて遊びづらい」と言われてしまいます。とにかくそのバランス取りに苦労しました。
しかし、「どうすれば期待に応えることができるか」という観点で常に判断をしていくことで、シナリオも、新規要素も、操作性なども、ユーザーが喜んでくれるであろう結果を自然とチョイスすることができたんじゃないかと思います。
Q. 今まで「DQ」シリーズをプレイしたことがない方々に向けて、このシリーズの魅力についてお聞かせください。
本作から初めて『DQ』に触れるゲーム プレイヤーの方々においては、「これが JRPG の伝説的な作品なんだ!」という部分をぜひ体感していただきたいです。
ファミリーコンピュータ版で先に発売された『DQI』『DQII』が好評を博し、この『DQIII』が日本において社会現象を引き起こしたことで、JRPG というものが世に定着し、確立したと言っても過言ではありません。
今回あえて「原作尊重」にこだわったのは、そういった「ゲーム史における金字塔に、現代において触れることができる」という体験をしてほしいという個人的な考えも実はあったんです。ですので、ぜひそういった部分を感じ取っていただけたなら幸いです!
『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』は、Xbox Series X|Sにて、現在発売中です。