Xbox におけるゲームのアクセシビリティの未来
ゲームにおけるアクセシビリティの向上に関する取り組みに向けられる注目は、ここ 10 年で劇的に増加しています。ESA Foundation の調査によれば、米国内に限定しても、なんらかの障碍がありながらゲームをこよなく愛するゲーマーの皆さんが約 4600 万人もいることが判明しており、あらゆる人に楽しめるゲームを実現するため、そしてより様々な方が楽しめるゲーム デザインを生み出すために必要な方法を開発者たちが活発に探し求め始めていることに、私たちは大きな喜びを感じています。
マイクロソフトでは、製品を生み出す際に最も重視する指標のひとつとして、アクセシビリティが掲げられています。また、Xbox では、あらゆる開発プロセスの基本として多様な視点で考えるインクルーシブで多彩な方々が楽しめるデザイン理念の採用を推進しています。
2019 年初頭、マイクロソフト ゲーミング アクセシビリティ チームは、ゲーム業界でアクセシビリティを推進する際に必要となる指標として、あらゆる要素のベスト プラクティスを提案する包括的な Xbox Accessibility Guidelines (Xbox アクセシビリティ ガイドライン) を書き記すための活動を開始しました。このガイドラインを用いることで、ゲーム デザイナーはゲームのアクセシビリティを検証することが容易になり、ガイドライン上の必要な情報を参照することで、よりアクセシブルなアイデアを生み出すためのプラットフォームとしても活用できます。Xbox アクセシビリティ ガイドラインはゲーム業界内でのアクセシビリティに関する長年の研究の成果に加えて、業界のエキスパートや障碍がある人々のゲーミング コミュニティにおける識者との密接なパートナーシップによる知見を組み合わせた編纂を経て、2020 年 1 月に第一版が公開されました。
フィードバックは大切に
Xbox アクセシビリティ ガイドラインの第一版が公開されて以降も、私たちマイクロソフト ゲーミング アクセシビリティ チームは、障碍がある人々のゲーミング コミュニティから常にフィードバックをいただき続けており、送られてくるあらゆるフィードバックの対応に力を注いでいます。それは、Xbox アクセシビリティ ガイドラインが公開される以前からそして公開後も、開発者を含む障碍がある人々のゲーミング コミュニティが求めるものを真に実現するためには、力強いパートナーシップが必要であると認識しているからです。
この一年間、開発者たちは Xbox アクセシビリティ ガイドラインへの強い関心を表明する一方で、これらのガイドラインをそれぞれのゲームで確実に実現するために必要なさらなる文脈や定義の明確化を求めるようになりました。また、開発者側からは、「何から始めればいいのか」や「どのように時間を配分すれば良いのか」などといった点をより詳しく理解するための追加のコンテンツの提供を求める明確な要望が多数寄せられるようになりました。さらには、ガイドラインを遵守することで、障碍があるプレイヤーたちの体験がどのように影響を受け、どのように改善されていくのかをより深く理解するための支援を求める声も挙がっています。
改善について
より高い関心を持った方々の力強いフィードバックを受けることで、私たちは Xbox アクセシビリティ ガイドラインをより良い姿へ、より人々の支援となるものと昇華させるため、さらなる改良を目指すべく新たなプロジェクトを立ち上げました。マイクロソフト ゲーミング アクセシビリティ チームのケイトリン ジョーンズ (Kaitlyn Jones) に率いられたチームは、ゲーミング アクセシビリティのエキスパートであり、作業療法士でもあったケイトリンの主導で以下の点に注力しました:
・より明解になった表現: Xbox アクセシビリティ ガイドラインに用いられている表現を、明確により理解しやすく改善しました。極めて技術的だった表現をシンプルに表現することや、様々な定義の理解を手助けする注釈などを盛り込むことを改善プロジェクトの最優先事項のひとつとしました。
・明確な「目標」: それぞれのガイドライン項目には明確な「目標」となるステートメント (宣言) が組み込まれています。ガイドラインを読む際にはこれらのステートメントをまず確認していくことで、現在の作業に求められている項目の目標を素早く索引することができるようにしました。
・改善された概要欄: 開発者たちがそれぞれのガイドライン項目の重要性を正しく、そして容易に理解できるように、改善された概要欄にはそれぞれの項目を理解するカギとなる文脈情報に加えて、該当のガイドライン項目を遵守することで障碍があるゲーマーの体験がどのように改善されるのかを解説した摘要を載せるようにしました。
・スコーピング用の質問集: 高度な質問集を通して、ゲームに求められている各種要素が備わっているかどうかを開発者たちが確認できるようにしました。YES/NO 形式で行われるスコーピングを行うことで、開発者たちは注力しているゲームに求められているそれぞれのガイドライン項目の優先順位を正確に認識できるようにしました。
・特に注意しておきたい点を明確に: Xbox アクセシビリティ ガイドラインの適用時に、特に開発中のゲームにおける体験のどういった点に注意しておくべきかを開発者たちに向けて提示し、分かりやすく解説しました。
・背景の説明や基礎的な情報の共有: 比較的複雑であると思われる一部のガイドライン項目への理解を促進するために、補足となる背景の説明やその他基礎的な情報を追加で提供しました。
・実装ガイドラインにおけるたくさんの例示: 比較的理解が容易でないと思われる一部のガイドライン項目へ深い理解を促すために、画像や映像を活用した多くのモデルケースを作成し、該当の項目を現実に実装した場合の具体例として情報を公開しました。
ガイドラインを通じてゲームをより良く
アップデートされた Xbox アクセシビリティ ガイドラインの公開の準備が整った時、私たちは開発者たちがそれぞれのゲームで目指していたアクセシビリティのレベルに到達しているかどうかを確認するための手法を提供できることに気づきました。そうした思いを念頭に、ゲーム リライアビリティ エンジニアリング チームとゲーミング アクセシビリティ チームが協力することで生み出されたのが、業界初でプラットフォーム提供型の、Xbox アクセシビリティ ガイドラインを基準にゲームを検証するアクセシビリティ テストプログラムでした。このプログラムを開発するプロジェクトを率いたのは、ゲーム業界一筋25年、ゲーム リライアビリティ エンジニアリング チームのソフトウェアエンジニアリングリードであるマイク ギャンブル (Mike Gamble) でした。
このプログラムの登場によって、開発者たちは Xbox や PC 用ゲームタイトルをマイクロソフトに送ることで、Xbox アクセシビリティ ガイドラインに沿う形でアクセシビリティの分析、および検証ができるようになりました。問題が見つかった箇所には再現に至るための手順、スクリーンショット、そして様々な付加情報が添付され、障碍のあるプレイヤーにとって該当箇所におけるゲーム体験がどのように困難に感じられるかを開発者が理解できるようになりました。
加えて、特定の問題が障碍のあるゲーマーにどのような影響を与えるかをより深く理解するための案内も行っています。レポートには、ゲームのアクセシビリティ、よりインクルーシブなデザインを支援するための資料、アクセシビリティに関する活動を行っている非営利団体や業界エキスパートからの知見、そしてプラットフォームごとの役立つ技術的な資料といった追加情報が添えられた状態で開発者たちに返送されます。
様々な取り組みが進められている本プロジェクトですが、一連のテスト プロジェクトの取り組みの中でも最も重要である点は、障碍のあるゲーマーたちのプロジェクトへの直接参画かもしれません。あらゆるテストに障碍のある人々のゲーミング コミュニティのメンバーたちによるテストランが実施項目として含められ、テスト後には彼らからの生のフィードバックや知見が提供されています。
これまでの取り組みの中で生まれたパートナーシップを通して私たちのもとに届けられた開発者たちからの好意的なフィードバックには、深い感銘を受けています。彼らの意見が Xbox アクセシビリティ ガイドラインのあるべき方向性を指し示してくれたと、私たちは考えています。彼らの尽力があったからこそ、アクセシビリティの高いゲームデザインを初めて試みる開発者であれ、インクルーシブさを追求し続けている熟練の開発者であれ、Xbox アクセシビリティ ガイドラインを指標としたテスト プログラムがあらゆるシーンにおいてアクセシビリティを高める効果的な指針をもたらしてくれるようになり、あらゆるプレイヤーの体験の改善に大きく貢献するようになったのです。
アクセシビリティを求める旅は続きます
Xbox ゲーミング アクセシビリティ チームは昨年から多くのフィードバックを共有し続けてくれている障碍のある人々のゲーミング コミュニティのメンバーや擁護者たち、専門家たちに深く感謝しています。しかしながら、私たちの取り組みはまだまだ道半ば、といったところでしょう。これからも、より多くの開発者たちや、障碍のある人々のゲーミング コミュニティからフィードバックを受け、Xbox アクセシビリティ ガイドラインをより良いものにしていくことが重要であると、私たちは考えています。よりインクルーシブなゲーム体験のために採用できるアイデアはないかなど、アクセシビリティの水準を高めるためにも、常に目を光らせ続けなければなりません。真にアクセシブルな体験を実現する旅は、始まったばかりなのです。
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※この記事は米国時間 2020 年 2 月 16 日に公開された “The Future of Game Accessibility on Xbox” を基にしています。
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