『Towerborne』開発者インタビュー: Stoic 社が創る、楽しさ重視の大作アクション RPG

概要

  • 『Towerborne』の開発とプレイヤーに注目してほしい点について、開発会社 Stoic の共同設立者兼チーフ クリエイティブ オフィサーであるアーニー ヨルゲンセン (Arnie Jorgensen) 氏に聞きました。
  • 『Towerborne』は、遊びやすさと上達の楽しさを兼ね備えた乱闘スタイルのアクション ロールプレイング ゲーム (ARPG) で、シングルプレイと最大 4 人までの協力プレイに対応しています。
  • 2024 年に PC (Windows および Steam) と Xbox Series X|S 向けに登場し、発売初日から Xbox Game Pass で提供される予定です。

今年初めの Xbox Games Showcase で “ワールド プレミア” として発表された『Towerborne』が gamescom に初めて出展され、多数のゲーム ファンが直接体験できる貴重な機会となりました。今回、筆者も実際に体験し、本作の開発と、プレイヤーに注目してほしい点について、Stoic の共同設立者兼チーフ クリエイティブ オフィサーであるアーニー ヨルゲンセン (Arnie Jorgensen) 氏に話を聞くことができました。

「gamescom はクリエイティブなパワーをもらえますし、私たちが取り組んできたものを皆さんに見ていただきたいと思っています」と、ヨルゲンセン氏。「今回は、古の菌糸の森の奥深くに棲む巨大な敵を倒すための緊迫した戦いを体験していただきます。武器のコンボやアビリティは、ボスに向かう途中、主を守ろうとするザコ敵たちと戦うことで鍛えられます。プレイヤーの皆さんには、『Towerborne』のエキサイティングな戦闘と魅力的な世界の一部をスリリングに体験していただければと思っています」


希望の象徴


『Towerborne』の概要を読むと、「ベルフリーは希望と安全の象徴として、廃墟となった文明や数の都市の中にそびえ立っており――」とあります。”廃墟となった文明” と聞くと、少し暗くて不吉な気もしますが、『Towerborne』で最初に気付いたのは、その美しさです。背景で家々が燃え、死が漂っているにもかかわらず、明るく陽気な雰囲気と、安全なベルフリー (鐘楼) にいるか、敵に囲まれた戦場にいるかに応じてテンポが変化する、楽しく高揚感のある音楽とが相まって、まさに “希望の象徴” というメッセージが表現されています。本作の音楽や映像のデザインによって、荒廃した世界を見るかわりに、”数の都市” に対して気楽な気持ちになることができました。

『Towerborne』のクリエイティブ スタイルについて、ヨルゲンセン氏に聞きました。「これまで『The Banner Saga』で行なってきたことを参考にアート ディレクションを始めました。つまり『Towerborne』は、まるで美しい長編アニメ映画の中でプレイしているかのように見せたいということです。本作では Unreal Engine を使用することで、最初に頭の中でイメージしていたものよりも遥かに素晴らしい、『Towerborne』の世界観にぴったりの、よりアップグレードされた現代風のビジュアルを実現することができました」と、ヨルゲンセン氏は話します。


ボタンを連打して戦利品をゲット


じつのところ筆者は、コンボを繋げたり、派手なフィニッシュ技を決めたりするために複雑な戦闘操作を覚えなくてはいけないゲームが大の苦手です。しかし、『Towerborne』の戦闘の楽しさは、歴戦のゲーマーでなくてもそのような気分を味わえるシステムにあります。ボタン連打だけでも楽しめるし、もう少し戦術的に攻撃や回避を行なったり、必殺技の使いどころを考えて使ったりすることもできます。どちらのプレイ スタイルでも、本作はとにかく楽しいのです。ヨルゲンセン氏に、従来とはかなり異なる戦闘システムを持つ本作をどのように作り上げ、これほど楽しいものにしたのか訊ねてみました。

「本作は非常に遊びやすく、友人と一緒ならより楽しめるようになっています。誰でもコントローラーを握ってボタンを連打したり、戦利品を手に入れてキャラクターを強化したりできます。戦闘は軽快で、幅広い層が楽しめるようになっています」と、ヨルゲンセン氏は話します。「プレイを重ねて武器固有のコンボやアビリティにこだわり出すと、最初に思っていたよりずっと戦闘が奥深いことに気づくと思います。ワールド マップを眺めて、雲から突き出たボス敵の頭を見つけると、次に倒すべき新たな目標に気付くと思いますが、ボスを倒すには武器を鍛え直し、装備をレベルアップさせる必要があるかもしれません。本作では、ストレスを感じさせずにプレイヤーを引き込み、楽しい時間だけを過ごせるようにしています」


楽しさへのこだわり


本作がどのようにして「遊びやすく、楽しく上達できる」ゲームになっているのかをより理解するために、シニア コンバット デザイナーのアイザック トーレス (Isaac Torres) 氏にも、中心となる戦闘システムを深く掘り下げてもらいました。「戦闘チームの大半は、これまでアクション ゲームやベルト スクロール アクション ゲーム、格闘ゲームに携わってきたデザイナーやアニメーターで構成されており、手触りの良さを優先してきた過去を持っています」とトーレス氏。「他にも RPG や MMO など、様々なジャンルを手掛けてきたデザイナーもいます。こういったチームの多様性のおかげもあり、数多くのゲームからインスピレーションを得て、独自のアイデンティティーを生み出すことができました」

「ゲーム内容の点で言うと、弱攻撃と強攻撃は、どちらのボタンを最初に使っても互換性があるようにしました。ボタンを押せば、自分の技量に関係なく、何かカッコいいことができるのです。好みのボタンの組み合わせや技が見つかれば、それらを中心に自然と戦略を立てられるようになると思います」

「探索と発見を通してプレイヤーにご褒美を与えることが重要で、戦闘システムはそれを念頭に設計されています。たとえばアンブラ (Umbra) は、戦闘力を増幅させ、通常ではできないことをできるようにしてくれます。敵をその場に固定したり、ジャグリングを容易にしたり、あるいは遠距離に何かを撃てるようになったりします。それぞれの能力の内容を見極めるのも楽しみのひとつで、戦闘をユニークで広がりのあるものにしてくれています」と、トーレス氏は話してくれました。


一緒に冒険する


“戦闘が楽しい” と述べましたが、楽しい=簡単であるとか、本作のかわいらしい敵兵に危険がないなどとは騙されないでください。確かに、一度に 1 体や 2 体であれば力押しで突破することもできますが、荷馬車のような目標を守ろうとしている際、戦場に 6 体かそれ以上の敵が現れると、圧倒される場合があります。大きなボスとの戦いではなおさらです。そこで頼りになる仲間の出番というわけですが、『Towerborne』ではそれをアンブラという形で実装しています。彼らは本作の非常に重要な部分であると感じたので、ヨルゲンセン氏に説明してもらいました。「アンブラは小さな精霊で、それぞれにモチベーションや個性があります。戦闘時、彼らはプレイヤーにステータスや能力を付与することで戦闘を支援してくれます。ある者は精霊の力を目の前に地面に叩き付けて一定範囲にダメージを与えたり、ある者は画面全体に猛烈なダメージを放射したりします。彼らはワールド マップを探索して見つける必要があり、集めることで、来るべき戦闘で自分に合ったものを選べるようになっていきます」


ベルフリーの NPC


ベルフリーは、友人や仲間と連携して次の冒険を計画する拠点ですが、興味深い NPC (ノンプレイヤーキャラクター) たちもいたりします。筆者は限られたプレイ時間の中で何人かに会ったものの、詳しく知ることはできませんでした。そこでヨルゲンセン氏に、たとえば代表的なキャラクターについて教えてもらえないか訊ねてみました。「『Towerborne』のキャラクターは、本作の特別なストーリー展開のために用意されており、プレイヤーに集中力やモチベーション、世界に関する情報をもたらしてくれます。ほんの数人だけ挙げると、皆さんを Ebb から再び新しい人生へと引き戻してくれる、屈強な Paloma。生真面目な司令官の Krafft。皆さん自身の闘志の使い方を教えてくれるアンブラの精霊 Courage。Bumble と Blundt は優れた武器と道具を作り、何度も死んでいるエースの Ryx は、Ebb の精霊について熟知しています」


マップを作り、用いる技術


筆者はマップやチャートが大好きで、プレイするゲームでは必ずマップの機能にも注目しています。『Towerborne』のマップは機能的で使いやすいだけでなく、ゲーム同様に美しく、冒険の重要な要素となっています。本作の優れたマップ デザインについては、ヨルゲンセン氏も次のように話してくれました。「マップは、『Towerborne』の世界を探索するための手段となります。安全なベルフリーからヘクス単位で、発見、ストーリー展開、敵の集団、ボス ミッションなどが発生する荒野を冒険していきます。Danger License のミッションを通じて、貴重なアイテムの入った宝箱を見つけたり、アンブラの精霊を探したり、より危険なエリアへの道を解放したりできます。このマップは、美味しいお菓子でいっぱいのスイーツ屋さんになるようにデザインされています」


『Banner Saga』のメーカーが開発


『Towerborne』は、数々の賞を受賞した戦略 RPG『Banner Saga』シリーズで知られるスタジオ、Stoic が開発しています。『Towerborne』の内容はまったく異なりますが、若干の共通点もあります。「最大の共通点は、両者の基本となるビジュアルの方向性、すなわち長編アニメ映画のようなルックスです。開発初期の頃は、『Banner Saga』の移動シーンのように、戦闘では左から右へのレイアウトが多かったのですが、現在ではより多くの動きと方向が追加されています。また、以前は『Banner Saga』のように完全に 2D でしたが、すぐに Unreal Engine が得意とする 3D へと方向転換しました」とヨルゲンセン氏は話します。「キャラクターにセル シェーダーを使用し、彼らが存在する世界を手描き風に表現することで、現在のようなルックスを実現しています。世界観やキャラクターのデザインも素晴らしいものになっており、『Banner Saga』 よりも遥かに気楽で高揚感があります」


最後に


『Towerborne』は、筆者が最近プレイした『Tunic』、『Planet of Lana』、『Ori and the Will of the Wisps』、『イモータルズ フィニクス ライジング』といったゲームを思い出させてくれます。内容が似ているというわけではなく、ただ美しく、楽しくて、優れたゲームに求めるものがすべて詰まっているからです。『Towerborne』にも、これらすべてが備わっていると思います。

「『Towerborne』は、子どもと一緒にプレイできるくらい遊びやすく、それでいて大人も置き去りにしない、テンポの速い戦闘ベースのゲームにしたいと考えました。現在のゲーム コミュニティに夢中になってもらえる、より大規模で、より現代風の内容のベースとして、乱闘スタイルの戦闘システムは非常に合っていると思ったのです」とヨルゲンセン氏は語ります。「そのベースに、奥深い ARPG の仕様、クールな戦利品システム、Stoic の世界観を組み合わせ、広がりのある世界にまとめ上げました。このジャンルに多くの新要素を追加していますが、ワールド マップも、新鮮に感じてもらえる隠し味のひとつです」

最後に、ヨルゲンセン氏が現在プレイしているゲームについて個人的に質問してみました。ゲーム開発者がどんなゲームをプレイしているのか、いつも気になるのです。「最近、ゲームをプレイする時間があるときは、PC の『Pillars of Eternity』か『Songs of Conquest』ですね。『Untitled Goose Game~いたずらガチョウがやって来た!~』と『It Takes Two』も息子と一緒にクリアーしました。スマホで『クラッシュ・ロワイヤル』も遊んでいますよ」

『Towerborne』は 2024 年に PC と Xbox Series X|S 向けに登場し、発売初日から Xbox Game Pass でも提供される予定です。『Towerborne』の詳細については公式サイトをチェックし、Twitter で @Towerborne をフォローし、Xbox Games Showcase での独占インタビュー (英語ページが開きます) をご覧ください。

※この記事は米国時間 2023 年 8 月 23 日に公開された “Ace of the Belfry: How Stoic is Developing Towerborne to be an Epic Action-RPG with a Focus on Fun” を基にしています。