本格的なホラー ゲームへと変異した『The Sinking City 2』

ラヴクラフトの物語の登場人物は、突然変異しやすいもの――世界の暗がりに潜む恐怖にさらされることで、精神も肉体も永遠に変異してしまうのです。よって、最新の「Xbox Partner Preview」でワールド プレミアとして公開された『The Sinking City 2』が予想外の変異を遂げたのも、驚くべきことではないのかもしれません。

前作は、浸水した世界を旅する中で、湧き立つ泡のようにホラー要素がそこかしこに点在するような推理アドベンチャーでしたが、その続編は、よりダークで刺激的な形となりました。『The Sinking City 2』は、ラヴクラフトの物語性をそのいびつな心臓部に持ちながら、より戦闘に重点を置いた、よりホラー ゲームらしい作りとなっています。

「『The Sinking City』は、ホラー ジャンルへの強いこだわりや設定により、当社で最も成功したタイトルのひとつです」と 、Frogwares のパブリッシング責任者であるセルゲイ オガネシアン (Sergey Oganesyan) 氏は語りました。「私たちにとってはある種のブレイクスルーのようなもので、今回、本格的なホラー ゲームを手掛けることに非常にワクワクしています。これまでにかなりの数の推理アドベンチャーを作ってきましたが、今後は皆様にご好評いただいている点、すなわち豊かな物語体験を提供し続けながらも、様々なものを組み合わせながら進化させていきたいと考えています」

その結果、『The Sinking City 2』は前作と似た設定でありながら、ゲームプレイはまったく違うものになっています。前作と同じように、Frogwares は 20 世紀初頭という舞台、浸水に見舞われた街、そして理解できない状況に足を踏み入れる部外者、という設定を用いています。しかし前作とは異なり、今回、プレイヤーの私たちは (パワフルな Unreal Engine 5 でレンダリングされた) ホラー ストーリーに頭から放り込まれ、そして問題の街は、思いがけず馴染みのある場所なのです。

「時は、第一次世界大戦後、好景気に沸く 1920 年代半ばのアメリカです」と、オガネシアン氏は説明します。「しかし、とあるアメリカの片隅には華やかさや煌びやかさは皆無です。アーカムの街 (ラヴクラフト ファンにはおなじみの名前ですが、バットマン ファンは混同しないように) は、未知の、超常現象的に発生した洪水の犠牲となっています」

オガネシアン氏によると、開発チームはストーリーの詳細については口をつぐんでいるものの、前作からの影響だけでなく、ラヴクラフトの物語からの新しい引用もあるそうで、「『深きものども』のようなラヴクラフトおなじみのモンスターがより登場します」と、ほのめかしています。ただ、Frogwares は常に古典的な内容に独自の解釈を加えるスタジオであり (何しろ、シャーロック ホームズのゲームで有名なスタジオですから)、真に独創的なホラー ストーリーを作り上げることに非常にこだわっています。

「海からの腐敗や荒廃が絶え間なく続いていて」とオガネシアン氏は続けます。「暗がりに、この世のものではない存在がいる。住民の心は歪められ、いつの間にかそれに慣れてしまっている。これが、今回のキャラクターが、すぐには明らかにされない任務のために足を踏み入れる世界となります」

そのキャラクターは、前作の主人公であるチャールズ リードではありません。Frogwares からは、まだ彼が誰なのか明かされていませんが、それはプレイヤーに新鮮な気持ちでプレイしてもらうための極めて意図的な判断によるものでした。 「『The Sinking City』で作ったものに縛られないストーリーと設定を作りたかったのです」と、キャラクターと舞台の変更についてオガネシアン氏は話します。「とりわけ、前作はマルチ エンディングでしたので、プレイヤーそれぞれにとって、好みのエンディングや『トゥルーエンド』と考える結末があったと思います。主人公を変えることで、既存のファンにも新鮮な気持ちでこの世界に戻ってきてもらうことができますし、前作をプレイしたことがない人にも、ストーリーの大半を見逃していると感じさせずに、この世界に足を踏み入れてもらうことができるからです。

「これは実際のところ、親切な計らいです」とオガネシアン氏は冗談めかして話しました。「現実的に考えて、ひとりの哀れな男が、こんな精神的恐怖に何度も耐えられると思いますか? 可哀想なチャールズにこれ以上負担を背負わせる代わりに、別の新人に負担してもらうことになります」

しかし、公開されたトレーラーからも伺えるように、最大の変化はゲームプレイそのものにあります。前作が、時折ホラーな戦闘要素を挟む推理ゲームだったのに対し、『The Sinking City 2』では、それが巧みに 180 度転換されています。

「今回は戦闘と探索がメインとなり、よりホラー要素が強くなっています。街のデザインもより洗練され、物事をスムーズに進められるように世界を縮小しています」とオガネシアン氏は話します。「戦闘がゲームの軸になるように重点的に取り組んできました。視覚的に強力なホラー要素を担保するために、これには敵のデザインも関わっています。それに加えて、レベル デザイン、ストーリー、ワールド デザインも調整することで、ゲーム全体でホラー要素が非常に強められています」

「推理の要素もまだ残されていますが、今回はシステムを刷新し、それらはすべて必須ではなくなっています。プレイヤーが手がかりを調査するか選べるようになり、その見返りとして、いろいろな進展に役立つ情報を得られる可能性があるわけです。たとえば、追加の調査をすることで、手強いボスを弱体化させる方法が分かったり、思いもよらない別のルートを見つけられたりできるかもしれません。もちろん、それらの情報がなくても先に進めますが、推理した情報に基づいて進めるほうが、より簡単になったり、より面白くなったりする場合があります」

これは大きな変更であり、Frogwares によって熟慮されたものであることは明らかですが――同スタジオのルーツがウクライナにあることを考えると、本作が非常に厳しい現実の状況を乗り越え、ゆっくりと作られてきた、熱のこもったプロジェクトであることが分かると思います。

「これまで話したことはありませんでしたが、2022 年 2 月にウクライナで戦争が勃発したとき、『The Sinking City 2』はプリプロダクションの初期段階でした」とオガネシアン氏は話します。「戦争により、私たちはすべての作業を無期限に保留せざるを得ませんでした。できる限り状況に適応しながら、スタジオの安定したワークフローを確保するためにあらゆる手段を講じ、自分たちにできることが分かった今、『The Sinking City 2』を再始動するときが来たと感じました」

これは、Frogwares が進めている変更に特別な意味を与えるものです。それはちょっと新しいことを試してみた、という次元を超えています――ゲームの規模、変更の範囲、そしてそれが正しい道であるという信念が、非常に強いものでなければ、このようなことはできません。彼らのような状況下でゲーム制作をするのは簡単なことではありません――オガネシアン氏と開発チームがそのビジョンの実現に取り組んでいるのは、文字通り、愛の為せる業といえるでしょう。

「私たちのすぐ傍にある戦争は、毎日対処しなければならない絶え間ないものです」とオガネシアン氏は締め括ります。「ありがたいことに、仕事やクリエイティブであることが、実際に休息になったり、『普通の生活』を送っている感覚に戻してくれたりします。私たちは懸命に、仕事の仕方を刷新することで適応してきました。何が起こるか、そしてそれにどのように対処すればよいか分かったので、必ずや前進して制作を続けるつもりです」

「これはチームの皆が以前からまさに作りたかったゲームであり、固い決意で完成に向けて取り組んでいます」

※この記事は米国時間 2024 年 3 月 6 日に公開された “Xbox Partner Preview: The Sinking City 2 Has Mutated Into a Full-Blown Horror Game” を基にしています。