GDC 2024: 世界中のインディーズゲームを Xbox で楽しもう

概要:

GDC (Game Developers Conference) は、ゲーム業界の集合知が一堂に会してアイデアの共有や今後のプロジェクトの発表、プレイヤーやクリエイターとの交流が行われる、ゲーマーにとってエキサイティングなイベントです。また、世界中の才能豊かなインディーズ ゲーム開発者たちが取り組んでいる作品を見る絶好の機会でもあります。

今年の GDC に帰ってきた「ID@Xbox Showcase」では、7 か国 10 名のゲーム クリエイターと、彼らの今後のプロジェクト (すべて、Xbox プレイヤーが楽しめるように開発中) が紹介されました。

Xbox Wire では、今後登場予定の『Sopa』 (コロンビア)、『The Sinking City 2』 (ウクライナ)、『Sonzai』 (インド)、『Go-Go Town』 (オーストラリア) のクリエイターたちに取材を行い、これらのゲームと、日本やアメリカのように確立されたインディーズ ゲーム開発シーンとは程遠いところでそれらを作る人々について詳しく伺いました。


自国でのインディーズ ゲーム開発シーンはどのようなものですか?


Studio Bando クリエイティブ ディレクター兼 CEO/ ファン カスタニェダ (Juan Castañeda) 氏 「コロンビアは活況で、非常に才能豊かなスタジオがたくさん存在します。コロンビアにはビデオ ゲーム協会 (Colombian Videogames Association) もあります。国内に点在するスタジオには、実績と才能を有する超ベテランの人たちがいます。その多くが多数のプロジェクトに携わった経験を持つため、もっと多くの人々に彼らの話を聞いてほしいと思っています」

『Sopa』

「蓄積されたあらゆる知識が、今作のような素晴らしいプロジェクトを実現できるところまで具体化され始めています」

「私たちの経験という点では、私自身はコロンビア出身ですが、ほとんどアメリカで働いていたため、少し変わっていると思います。私がコロンビアに戻ったときに、地元の人たちとつながり始めるようになりました。そして、物事が順調に進むにつれてチームが大きくなっていきました。より多くのコロンビアの人を巻き込み始めたのも、今思えばごく自然な成り行きでした」

Prideful Sloth クリエイティブ ディレクター/ シェリル ヴァンス (Cheryl Vance) 氏 「オーストラリアからの視点でいえば、インディーズ ゲーム シーンはすごい盛り上がりを見せています。オーストラリアは、国としてインディーズ ゲームの開発に非常に長けているという国際的な評価を得ることができていると思います。実際、非常に多くの素晴らしいゲームがオーストラリアから輩出されてきていると感じます」

『Sonzai』

『Sonzai』 エグゼクティブ プロデューサー/ アンディ アンディ ハン (Andy Andi Han) 氏 「(インドの) インディーズ ゲーム・シーンを表すのに最も適切な言葉は『孤立』です。多くの若くて将来有望な開発者が自身のキャリアを考え直したり、活躍の機会を得られなかったり、そもそもインディーズ シーンから距離を置いてしまうという状況が生まれています……。ここには、より一般的な職に就くべきという悪名高い社会的抑圧や、インド全土で複数の言語が使用されているという実情など、さらに多くの要因が絡んでおり、熱意のあるインディーズ開発者の集団を見つけるのはかなり難しくなっています」

「とはいえ、ここ 10 年の間にインドからいくつかのインディーズ ゲームが生まれるのも見てきました。これはインディーズかどうかに関係なく、将来のプロジェクトへの道となるはずです。インドには、クリエイティブなビジョンに投資する価値のある、非常に才能のあるアーティストが数多くいると信じています。できれば近い将来、その可能性のいくつかが現実になることを期待したいです」

Frogwares PR マネージャー/ ポール マイルフスキ(Paul Milewski) 氏 「ウクライナのインディーズゲーム シーンは黎明期とは言えないにせよ、まだ最初の一歩を踏み出したところです。ウクライナという国は今、世界中に認知され始めています。そんな折に、残念なことにウクライナ情勢による混乱が発生してしまいました。しかし、以前よりも遥かにこの国への注目が集まっているのは、ひと筋の光明です。より多くの人々が、ウクライナで何が起こっているかに目を向け始めています」

『Go-Go Town』

「ここ数十年、ウクライナのテクノロジー シーンは発展してきました。でも、それは非常に、極めて孤立したものだったと認識しています。これまではアイデアを得るために欧米に目を向けていたウクライナのインディーズ ゲーム シーンですが、今では独自のものを生み出し始めています。そして現在、欧米がウクライナに注目し、何を生み出し始めているかを見ています。つまり、まさに今、向けられている注目が何かにつながる希望の瞬間があるのではと……ウクライナからブレイクするゲームが増えれば増えるほど、後に続く世代の刺激になると思います」


今回の新作の開発過程は、どのような点で (他のプロジェクトとは異なる) 独自性を有していますか?


ファン カスタニェダ氏 「『Sopa』は私のキャリアを通して、そしておそらく人生の中で最も熱のこもったプロジェクトであり、このプロジェクトを支えるチーム全員が同じように感じているゲームだと思います。そこで、今作では異なるアプローチを取っています。私たちがやろうとしたことを表現するために、発信し、伝えられること。それがオーディエンスの手に取りやすく、楽しい――だけではなく、感動的な体験ができるようにすることも重要であること。それはまた、この視点に至るまでに私たちがどれだけ戦わなければならなかったのかということでもあります。どれだけ献身的に努力し、犠牲を払わなければならなかったか。そしてそれは、私たちプロジェクトを信じる、ということに立ち返るのです」

シェリル ヴァンス氏 「スタジオとしては『バットマン: アーカム』や『Devil May Cry (デビル メイ クライ)』といったタイトルを手掛けてきましたが、今回はコージー ゲーム (※居心地の良いゲーム) を作っています。つまり、以前とは真逆に変化したと言えます。単純に、違うことをしたかったのです。全員とも、『バトル系がしばらく続いたので、バトル系は止めよう』という感じでした。そして、今作が当スタジオの贈る 3 作目のゲームとなったのです」

『The Sinking City 2』

「農業というジャンルのゲームを作りたかったというよりも、オープン ワールドで、もっといろいろなことができる内容にしたかった感じです。それが――フィードバックを経て――「ゼルダ」と農業が融合したようなものに形を変えていきました。本作でどのような体験をしたいかに基づいて、常に姿を変化させてきました」

『Sonzai』 プロジェクト コーダー/ リタム レイ (Ritam Ray) 氏 「私は 12 歳の頃からゲーム作りにのめり込んでいました。好きなゲームの改造から始まって、ゲームのエンジンをいじったり、小規模のゲームやデモを作ったりしました。ですので、物心がついたときからずっとインディーズ ゲーム開発の道を歩んできた感じです。この仕事と、私が経験した他の技術系の仕事との最大の違いは、クリエイティブな自由の有無です。あまり面白い答えではないですが、ともかく重要な違いです」

『Sonzai』 プロジェクト アーティスト/ スワプニル カルマカー (Swapnil Karmakar) 氏 「私に関して言えば、自我を持った瞬間から今までのほとんどにおいて絵を描いてきました。でもゲーム開発とアニメーションの経験は、どちらも大学時代、『Sonzai』の直前に開発していたゲームからです。そのゲームは完成には至りませんでしたが、ゲーム開発がもたらす課題を教えてくれました。アニメーションは、『Sonzai』の開発を通して学びました。これまでに携わった他の仕事との最大の違いは、長期にわたるプロジェクトでは仕事の質やスタイルが変化するため、全体の一貫性を保つのが難しくなるということです。短編のプロジェクトでは、これが問題になったことはありません。ただ、今作は誇れるものを作れていると思います」

 『Sopa』

ポール マイルフスキ「Frogwares が独立を決めたのはつい最近のことで、最初にリリースしたゲームのひとつが『Sherlock Holmes: The Awakening』でした。ただ、あのプロジェクトは必要に迫られて始めたものでした。元々作る予定ではなかったのですが、その後のウクライナにおける情勢の変化によって、本来するべき開発を止めて、もっと小規模なことをしなければならなくなりました。このような状況下でゲームを制作できるかどうかを判断する必要があったのです」

「チーム メンバーは、状況に応じて減ったり増えたりします。停電は常に起こります。空襲もあります。今作は基本的には、前作で学習したあらゆることが、より大規模なゲームを制作する際にも通用するかどうかを確認するためのチームの大きなテストです。しかし、チームは『Sinking City 2』のサバイバル ホラーとしての性質を進化させ、調査の要素をオプションとして残すために、さらに前へと開発を進めています。したがって、これはチームが今作で成功を収め、視野を少し広げられるかどうかを確認するための非常に大きな一歩でもあります」


ゲームでは自分たちの国をどのように表現していますか?


ファン カスタニェダ氏 「ありふれた日常さえも背景として表現しようとしました。ラテン アメリカの文化には、そういった場所を舞台にしたゲームであっても、多くの人が見たことのない、カラフルで斬新なものがたくさん存在すると思います。より伝統的なゲームでは、そうしたラテン アメリカの本質が表現されることもありますね。美しく、素晴らしいものがゲームの体験の一部になった時には、この上ない幸せを感じます」

『Go-Go Town』

「今作ではそれをさらに推し進めて、日常的なことも含めて、実に没入的な感覚を伝えたいと考えました。ですので、『Sopa』の世界ではおばあちゃんの家でくつろいだり、ぶらぶらと歩いて、家にあるものを見て回ったりしてください。今回、取り入れたかったもうひとつの非常に斬新なものに、マジック リアリズムの概念があります。これは特に、コロンビアにおける私たちのアイデンティティの一部のようなものです」

アンディ アンディ ハン「『Sonzai』は、単純に私たちが作りたかったゲームです。リタムが好きな、『ペルソナ』シリーズや『ファイナルファンタジー VI』といった JRPG のようなテイストと、スワプニルが偏愛する『ベヨネッタ』や『メタルギア ライジング リベンジェンス』のようなスタイリッシュなキャラクター アクションをひとつに融合させたものになっています」

「正直なところ、これが私たちの地元のゲーム開発シーンをどれだけ表しているのかは何とも言えません。でも、私の意見では、より根本的なことを表していると思います。ゲームを作りたいと思っていて、自分の限界さえ知っていれば、実際にインディーズ ゲーム開発に飛び込むことができることを、です。」

  『Sonzai』

「インディーズ ゲーム シーンに目を向けるプレイヤーはどんどん増えています。『Sonzai』によって、地元のゲーム開発への関心がさらに高まることを願っています。そうすれば将来、私たちがやったようなことをするときに、人々は臆することは減っていくでしょう。すべては草の根から始まります。Top Hat Studios では時間をかけて藪をかき分け続けますし、その先ですごいことが行われているとも信じています。より多くのサポートがあれば、私たちのようなクリエイティブなプロジェクトがもっと実現でき、より多くのプロジェクトが生まれます。将来に期待していますよ。」

シェリル ヴァンス「今作は、業界での私たちの経験と、私たちのゲームにフィードバックを提供してくれる仲間たちとの活発な開発者コミュニティ、その両方の集大成です。また、私たちがこの業界に留まり、継続していけるのは、政府からの資金援助のおかげもあります……なぜなら現在、私たちの国にも実質的な税制上の優遇措置があるからです。これは素晴らしいことで、多少のセーフティ ネットがあることを知っているので、これまでとは違う規模でお金をかけて、環境を変えたり違うアプローチをとったりもできます。今までとは違うことを試せるのは、私たちにとって非常によいことです」

「特に今回のタイトルでは、開発開始から 1 年ほどでプレイ テストを実施しました。現在 4 回目なのですが、開発スケジュールが大幅に延びています。でも、私たちには先述した資金援助というセーフティ ネットがあります。このようなことができるのも、政府の支援があるおかげです」

『The Sinking City 2』

ポール マイルフスキ「東欧的なものなのか、それとも単に育ちの問題なのかはわかりませんが、ポーランドではどうだったか、ウクライナではどうだったか、ということを考えることがあります。これらの地域で活動するチームには、あまり白黒はっきりさせないストーリーの書き方のようなものがあるのです。対照的に、西洋のオーディエンスは常に善人と悪人をはっきり分けられた物語を求めているとも言えるかもしれません」

「ウクライナから発信されるストーリーには、道徳的にグレーな中道が常に存在します。完全な善ではないところで今作のようなことをやりたがっているのです。主人公は基本的に、絶対に道を違えない、ある種の英雄を演じるわけではありません。そういった巧みに構成された物語性を、今作にも適用するつもりです」


今回ピックアップしたゲームは、世界中で開発されているインディーズ ゲームのほんの一部であり、すべて Xbox 向けに開発されているものです。実際、『Sopa』は発売時に Game Pass でも提供されることになっており、同作と『Sonzai』は共に、過小評価されがちなグループのゲーム クリエイターに力を与えるための「ID@Xbox Developer Acceleration Program (DAP)」に参加しています。DAP の詳細は、こちらをご覧ください (※英語のページが開きます)。

※この記事は米国時間 2024 年 3 月 22 日に公開された “GDC 2024: Indies from Around the World to Your Xbox” を基にしています。