『Ara: History Untold』はグランド ストラテジーというジャンルをどう進化させるのか

概要

  • わたしたちは Oxide Games のデザイン ディレクター Michelle Menard 氏と『Ara: History Untold』がグランド ストラテジー ゲームにもたらす革新について話を聞きました。
  • Oxide Games は何十年もストラテジー ゲームを作ってきた業界のベテランで構成されています。
  • Ara: History Untold』は Windows PC と Steam 向けに 2024 年秋に発売予定で、PC Game Pass なら発売初日からプレイできます。

1 月 19 日の 「Developer_Direct」でご覧になった方も多いと思いますが、Oxide Games のスタジオ内を歩けば、ゲームに対する情熱に不足はないことがわかります。このスタジオはゲーム業界のベテランが大勢在籍しており、何十年ものあいだこの領域で創作活動を続けているクリエイターばかりです。なので、魅力的な戦略ゲーム体験を生み出すためのアイデアには事欠きません。そして今、彼らは PC ゲーム界で最も愛されているジャンルのひとつを自分たち流にアレンジし、確固たる地位へと登り詰めようとしています。

Ara: History Untold』は、歴史グランド ストラテジー ゲームというジャンルを進化させる作品だと自称しています。しかし、このような確立されたジャンルにおいて、次のステージを切り開こうとするのは困難な作業となるでしょう。いったいどこから手をつければいいのでしょうか? じつは簡単なことで、何が問題なのかを考えて、そこから改善を始めればいいのです。

「『Ara』を始めるにあたって最初に行ったことの1つは、グランド ストラテジーというジャンルの中で私たちを常に悩ませてきた重要な側面、つまり私たちが改善できるような領域を特定することでした。その 1 つが最適戦略です」と Oxide Games のデザイン ディレクター Michelle Menard 氏は説明します。「このジャンルで悩まされるのは、勝ち方やゲームの仕組みがなんとなくわかってしまうと、もうマスターした気持ちになってしまうことでした。技術ツリーのような静的な要素は、解決可能な問題なのですから」

グランド ストラテジー ゲームをプレイしたことがある人なら、 Menard 氏が言っていることがよくわかるはずです。私たちプレイヤーは、成功への最も単純な道、たとえば技術や科学ツリーの最適ルートを見つけようとする傾向があります。自分が望むプレイスタイルに落ち着き、それをうまく機能させる方法を見つけてしまえば、あなたはそのゲームをマスターした気分になるでしょう。『Ara: History Untold』がやろうとしているのは、既成の秩序に予測不可能性を持たせることで、プレイヤーに適応力が求められ、目の前の状況をしっかりと考えるよう促すことにあります。

「プロトタイプを作るにあたって、私たちがやりたかったことはプレイするたびに考えさせられ、先を見据えるようになり、プレイ内容を見直すようなことができるものにしたかったのです」と Menard 氏は語ります。「初期のプロトタイプ (私たちは物理的なプロトタイプをカードを使ったボードゲームで作っています) でも、カードを配ったり、シャッフルしたり、カードを取り替えたりと工夫が行われました。プレイヤーに何回も遊んでもらい、自分の状況を考え直して再チャレンジしたもらうための簡単なメタファーでもありました」

このプロトタイプの段階から生まれたのが、現在のプレイヤーの状況を考慮することで、ランダム性の要素を含む『Ara: History Untold』独自の技術システムです。カードを 1 枚選べばもう 1 枚を選べるというような白黒はっきりしたものではありませんが、少しプレイした感触では、これは直感的な機能だと感じました。例えば、当面のあいだ天文学の技術を選ぶと決めた場合、化粧品や戦車などを探求する機会は一時的に捨て札として失われることになるのは分かりやすいでしょうか。

プレイヤーの選択が真価を発揮するのは、次の時代 (たとえば青銅器時代) に進むことを選択するときです。次の時代へ進んで新しい強力な技術を手に入れるか、それとも今の時代に留まって基礎知識を蓄えるか、どちらかを選ぶことになります。時代が進むと、「前時代の技術」へのアクセスが放棄されるため、将来研究する機会が制限される可能性があります。

この機能によって、いわば「運試し」をすることができ、その進歩や選択がゲーム終盤の全体的な戦略にどのように影響するかを、広く考えることができるようになりました。どの技術を選ぶか、そして決定的に重要なのは、どの技術を捨てるのか決めなければならない、という点です。『Ara: History Untold』の革新的な「枠にとらわれない」アイデアの 1 つであり、私たちはこのチームが本作をどのように料理するのかを見守りたいと思っています。

Oxide Games のメンバーの多くは、『Civilization』やその他のタイトルで一緒に仕事をしたことがあります。しかし、既存の IP を開発する場合、期待されていることの限界を押し広げることしかできません。『Ara: History Untold』は、その限界を取り払って制作できるため、プレイヤーにとって (そして開発者にとって) またとないユニークな体験になります。

Menard 氏は「すぐに何ページも仕様を書き上げました」と、ゲームに取りかかったことについて熱く語りました。さまざまなメモを書いたカードがあちこちに飛び散りながら、1 週間程度で大枠のプロトタイプをまとめあげたそうです。スタッフのエンジニアたちは、「こんなことをやっていて完成するのだろうか」という感じで、あまり興奮していませんでした。

Menard 氏が言及しているように、チームは開発の最初の数年間、『Ara: History Untold』の完全な機能を持つボードゲーム版を開発し、この段階でアイデアをより早く反復できるようにしていました。実際に、「Developer_Direct」の中でチームがボードゲームをプレイしている様子を見ることができます。

「そのボードゲームを使って毎週チームでプレイテストを行い、4 対 4 のゲームに参加してもらって、どのように機能するか、どのようにペース配分されるか、何が楽しくて何が楽しくないかをつねに確認しました。初期段階で、私たちはこのボードゲーム版を繰り返しプレイしたのです」

その素早いイノベーションは、『Ara: History Untold』のデザインのもうひとつの柱である、経済システムのクラフト要素を生み出すことにつながりました。クラフトは新しいユニットを育成するための鍵であり、贈り物を作ったり交易路を確立したりして、他国から好意を得るための重要な要素です。たとえば、ゲーム中にスカウトをもう 1 人作ろうと思ったとき、スカウトの杖 (このユニットを作るのに必要な部品) を作る必要がありました。スカウトの杖を作るために 1 ターンに投入する素材の量を増やし、スカウトの作成に必要な時間 (ターン数) を短縮させることができます。これも、他のグランド ストラテジー ゲームではあまり見たことがない、『Ara: History Untold』の世界ならではの要素です。

「資源管理は、4X やストラテジーというジャンルで私が最も好きな要素のひとつです。プレイヤーに新しい遊び方を提供したかったし、資源を使った新しい遊び方を考え出したいと思っていました。クラフトはそのための出発点のようなものです」と Menard 氏は言いました。「2 つのものがあったらどうしますか? 2 つのものがあったら、それをグループ化して新しいものを作ることができます! そして、固定された資源を持つ代わりに、(マップ上で) 見つけたものや隣国との取引に基づいて、新しいものをたくさん作ることができるとしたらどうでしょうか?」

『Ara: History Untold』の大きな革新性のもうひとつは、プレイヤーの時間の扱い方です。グランド ストラテジー ゲームはその性質上、プレイ時間がとても長くなり、1 日や 2 日離れてしまうと、再びゲームに飛び込むのが難しくなることがあります。そこで『Ara: History Untold』の Act システムが活躍し、プレイに戻るための自然な中断点を与え、現在の戦略がうまくいっていないことを示す早めの指標を示す仕組みが搭載されています。

これらの Act システムは 3 つのフェーズ (I、Ⅱ、Ⅲ) に分かれており、決められたターンまでに十分な Prestige (クエストの完了、技術の進歩、文化的傑作の創造など) を達成したプレイヤーだけが、次の Act に進むことができます。残りのプレイヤーはボードから追放されます。これは残酷に思えるかもしれませんが、超時間に及ぶ壮大なゲーム セッションの後、大敗を喫さなくてすむので、自分の戦略が報われるかどうかを早めにチェックするには最適です。

「20 時間のゲームをプレイして、2 時間目に負けたと気づくのはとてもつらいことです」と Menard 氏は言います。「だから、これはプレイヤーに対する優しさなのです。頻繁に、そして早い時間に失敗し、そこから学び、さらにプレイする。それは悪いことではなく、負けたプレイヤーにはすでに負けたことを自覚させて、実際に負けさせることが大事なのです」

Act システムが本当に素晴らしく感じるタイミングは、マルチプレイ時でしょう。現実的には、仲間と一緒に (時には何週間も) 同時にゲームをプレイするのは難しいことです。Act システムなら、簡単に中断できます。初日に Act I をプレイし、翌日は Act Ⅱ をプレイし、3 日目は Act Ⅲ をプレイする。これによってプレイヤーは、現実的にフレンドとのマルチプレイ セッションを企画 (そして完遂) しやすくなります。週にゲームに割ける時間が限られている身としては、とても楽しみで嬉しい機能です。

『Ara: History Untold』のような野心的なタイトルを完成させること、そしてストラテジーというジャンルを進化させることは、とても重要な挑戦です。完全な新エンジンの開発から、詳細なレベルのアート、生きた世界の構築、何時間にも及ぶ生演奏のレコーディングまで、『Ara: History Untold』のスケールの大きさは、おそらく適切な支援なしに達成することはなかったでしょう。

「マイクロソフトは素晴らしいパートナーです。ゲームというのは、たとえそれがとても面白くて巨大なコミュニティを持っていたとしても、そのゲームに最も多くのリソースが投入されるとは限りません。また、予算が十分であっても制作スケジュールが非常に短いこともあるでしょう。その点、マイクロソフトの協力は素晴らしいものでした。他の会社では、このような余裕のある制作スケジュールやサポートは決してありません」。

『Ara: History Untold』は 2024 年秋に Windows PC と Steam 向けにリリース予定で、PC Game Pass で発売初日からプレイできます。私は Menard 氏に、発売初日から成熟したコミュニティに届けられることについてどう思っているのか尋ねてみました。

「素晴らしいことです。グランド ストラテジー ゲームは、とっつきにくい部分があります。このジャンルは新しいプレイヤーが興味を示す一方で、その興味から購入してもらうよう説得しなければなりません。Game Pass のようなものがあれば、初日からすぐにプレイすることができます。私たちは『Ara: History Untold』で、グランド ストラテジー ゲームの市場をこれまでプレイしたことのないような新しいプレイヤーに広げたいと常に考えており、それは Game Pass で配信されるからこそ可能なことだと思います」。

5 年後、『Ara: History Untold』が他の多くのグランド ストラテジー ゲームの中でどのような位置づけになっているのでしょうか。 Menard 氏に尋ねてみました。

「5 年後も様々な拡張やダウンロード コンテンツを開発し、もっととんでもない方向へ進ませたいと考えています。『Ara: History Untold』は、従来のグランド ストラテジー ゲームでは得られなかった、より多様な体験をプレイヤーにもたらすことができるでしょう」

※この記事は米国時間 1 月 18 日 に公開された“How Ara: History Untold is Evolving the Grand Strategy Genre”を基にしています。